*甲斐凪視点
生徒会室前、念のためノックしようと手を伸ばせば、勝手にその扉は開いた。
「!、……(七恵……?)」
「……、……」
「………………」
「………………」
出てきたのは鈴葉様でもなんでもなく、七恵蓮─。
変な沈黙が互いに流れる。
けれど先に口を開いたのは、彼の方だ。
「……樋坂ちゃんなら、中にいるよ」
返答は求めてもいないのか、俺の言葉は待たずに颯爽と何処かへと去って行く。その様子を見届けつつ、改めてもう一度ノックをした俺は、ゆっくりと生徒会室の扉をくぐった。
「鈴葉様、今朝はすみませんでし─……、!」
てっきり作業をしていると思い混んでいたせいだろう。無防備にソファで眠っている鈴葉様が見えて、息が詰まった。
七恵が出てきたことで一瞬嫌な予感はしたが、ブレザーを脱いでいる以外、特に変わったところはないし着衣の乱れもなさそうだ。
「、……いいや、」
ネクタイをしていない……?
不思議に思って軽く見渡してみるも、何処にもそれらしきものは見当たらない。ただ彼の今朝を知らない分、たまたましていないだけかもしれない。
兎にも角にも、
このまま寝かしておくのは危険なので起こすことにする。
42/143 / shiori
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