不覚だった。まさか口移しまでして飲まされるとは。

もし2度目があったら大変なので、若干警戒しつつ、もう終わるであろう資料を作成していく。この調子なら休憩を挟む前に終わりそうだ。


「ん〜……昼までに6、7回……でも樋坂ちゃんに負担かかったら意味ないしなぁ……いくら挿れんのが手っ取り早くても」


おっと、何の話だ……?

ちらりと先輩を伺えば時計を見ながらぶつぶつ言っていた。独り言のつもりだったら悪いけれど、めっちゃ聞こえている。



不審に思いながら、少し暑くなってきたのでブレザーを脱いだ。今日って気温高くなるのか……?
春にしてはちょっとな。。

ネクタイも少し緩めて、首もとの風通しをよくする。


あ、涼しい。

暑いのには変わりないけれど。


「……あれ、樋坂ちゃん、どうしたの?」

「暑かったんで……」

「へえ」

「え、何閉じて……─!」


ぱたり。

いきなりパソコンを閉じられて、その手を退けようとしたら、逆に手首を掴まれてしまった。

な、なんか、腰に響く……?



「ホントだ、熱い」


「っ、」


やばい、終わったかも───


mae ato



35/143 / shiori








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