食堂近く。特に会話も無いまま前を歩いていた社先輩が立ち止まった。

「先輩…?」

「私はここで失礼します」

「あ…分かりました。ありがとうございます」

「距離は離れますが、お席に着くまでは見届けさせていただきますのでご安心ください」

「ど、どうもです…」

面と向かって先輩に頭を下げられるのは少し気まずいが、仕方ない。生徒会の立場が学園で強すぎるが故に避けられないわけで俺が慣れるしかないのだ。

席に着くまで見られているのも落ち着かないので、気持ち急ぎ足で食堂へと向かった。ちなみに俺が一人の時は軽い挨拶が飛んでくるくらいで歓声は無いので皆で食堂に行くよりは気楽だったりする。視線はすごいけど…。

「おつかれ〜樋坂ちゃん!今日のテストはどう──…」

役員席に着いてすぐ、既に来ていた七恵先輩が肩を回してきて絡んできたかと思えば、怪訝な表情をしてきた。ちょっと前にもこんなことがあったような…

「?、どうかしましたか?」

「ん〜?……なんで樋坂ちゃんから会長の匂いがするの…?」

「!」

こそっと耳元でそんなことを言われて言葉に詰まる。正直に答えても誤魔化してもからかわれそうだけれど、雷が怖いから添い寝してもらってたとか恥ずかしすぎる。

「秘密です……」

「…ふうん。どーしても?」

「ッ…ちょっ……息、やめてください…!秘密は秘密ですから…!」

しれっと太ももに置いてきた手も退けて、離れさせるために押し返す。いくら下から見えないからってこの人は…!

「ちぇ、まあいいけどさあ…」

「注文するので近づかないでください」

「おれもまだだから一緒にしよーよ〜」

「もうひとつ端末あるじゃないですか…!」

そんな攻防を繰り広げていたら、テスト期間でもお構い無しにいつもの大歓声が食堂に響き渡った。会長と副会長がやって来た合図だ。タイミングとしては大変有難い。助けてもらおう。

「二人とも何やってるの?」

「仲良く注文しよーとしてたんだよ。なのに樋坂ちゃんがタッチパネル見せてくれなくてさ〜」

「ち、違いますよ!先輩が変なことしてくるから…」

「平気そうだな」

副会長に少し遅れて階段を登ってきた会長が突然そんなことを俺に言い放ち、場の空気が少し固まる。幸いにも周りはがやがやとしているので微妙な空気が流れているのはこの役員席だけだ。

「お、お陰さまで……」

正直なんで微妙な空気になっているのかは分からないが、何も言わないのも失礼なのでお礼の言葉を返した。

「何かあったの?」

「いいや?コッチの話だ」

「そう…?」

「あぁ」

「…樋坂君も、困ったことがあったら知らせてね」

「は、はい…!ありがとうございます」


依然として微妙な空気のまま、タッチパネルの音が虚しく聞こえてくる。

先ほどまで散々ちょっかいを掛けてきていた七恵先輩も大人しくなってしまったし。

俺が知らないだけで、みんな喧嘩でもしてる…?もしくはテスト期間特有のピリピリみたいな?今後の進路にも関わってくるだろうしなあ…。

早く食べて部屋に戻ろう。



mae ato



143/143 / shiori








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