「…ん………」

寝返りを打って、ふと瞬きを繰り返す。どうやら暫く眠ってしまっていたらしい。横に居た筈の会長はもう居ないし、外は静かだ。ふうっと息を吐いて身体を起こした。

「おはようございます」

「うわっ…!?あ、おはようございます…!」

突然声を掛けられたと思ったら、会長のとこの隊長さんが居て頭を下げられる。

「隆也様は校舎へ戻られました。私は樋坂様をお待ちするようにと仰せつかっております」

「そ、そうなんですか」

「お身体は大丈夫ですか?」

「えっ…?」

「…………?……失礼しました。ご気分は如何ですか?」

「気分は大丈夫ですけど…」

何だ…?
一瞬怪訝な表情をされた。

「他に何か気掛かりな事がございますか?」

「あ…その…申し訳ないんですけど、お名前を聞いてもいいですか…?」

気掛かりな事は名前ではなかったけれど、会話をするには必要な事なのでついでに訊ねさせてもらう。

「私は社伊月(やしろいつき)と申します。不要な紹介かもしれませんが、隆也様の親衛隊長を務めております」

「ありがとうございます…社先輩」

「……私への敬称は不要ですが、学園では致し方ございませんね」

少し雰囲気が俊と似ているが、会長の親衛隊ということもあって俺に対する温度感は全く違う。むしろ、俊の普段の様子を考えれば会長と俺が何もなかったとしても一緒にベッドに居たのは社先輩からすればめちゃくちゃ嫌なのでは…?

「………あの」

「?」

「すみません…会長に、その…色々あって添い寝はしてもらったんですけど、一切何も無いので…!」

「………私が取り締まっておりますので問題はないかと思いますが、こちらの隊員から何か危害を与えられた場合は私か隆也様へお伝えください。(というより…まだ未遂だったのか…先走ってしまった─失言だ)」

「…え…あの、わ、分かりました…」

おかしい、想像と違う言葉が返ってきた。あんまり気にしてはなさそうだ。まぁ比べる対象が俊しかいないし、こういうケースもあるか…?

「もうすぐ夕食のお時間ですが、このまま食堂へ向かわれますか?」

「は、はい。向かいます」

「では、お近くまでご案内させて頂きます」

「ありがとうございます。すみません…会長でもないのに…」

「いえ、隆也様からの申し出でもありますし、現在樋坂様の安全は保証されておりませんので差し出がましいですが私が責任を持たせて頂きます」

「と、とんでもないです」


親衛隊長って、やっぱりどこも大変そうだ。



mae ato



142/143 / shiori








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