「ど、どうしたんですか?」
「…………」
自室へと戻ってきたら、何故か扉の近くに風紀副委員長の柊くんが壁に背を預けて立っていた。
俺は紙袋を後ろへ隠しながら、できるだけ平然を装って声を掛ける。
「カタク捜索」
「…え?」
ピラ、と1枚の紙をポケットから取り出して俺に見せてきたのは風紀取り締まり捜索届とかいう馴染みのない書類。
「言っとくけど、会長サマからは許可でてるから」
確かに、生徒会承認欄のところには会長の判子が押されている。
「早く開けてくんない?」
「理由とかって、聞いても…?」
「ダルい。自分で考えて」
「ええ…」
考えろと言われても、正直今の混乱した俺の頭では手に持っている紙袋の中身しか思い当たらない。タイミングが悪すぎる。
「早く開けて」
「、…どうぞ」
会長が承認している以上俺からはもうどうすることもできないので、紙袋に注意を払いつつ部屋の鍵を開けた。
「終わるまで、じっとしててもえらえます?」
「トイレとかは」
「!、………それ、今?」
「?、いや、行きたくなったりしたら、です」
「…………報告して」
俺はソファへと移動して足元に紙袋を置いた。やることもないので柊くんの動向を見守るが、彼が持ってきていたアタッシュケースからは手袋とタブレットがでてきて、早速画面を確認しながら玄関横の写真立てを調べていた。
そして小さな何かを押収して袋へと入れられる。
同じように周辺の小物をそれぞれ調べて袋へと入れられていく何か。玄関周りだけで5個だ。
「それ、なんですか?」
「カメラ」
「、」
カメラかあ…。
直ぐにある人物が頭をよぎった。
彼の状況的にも間違いないだろう。
ふう、と大きな息をはく。
理由はなんとなく分かった、気がする。
「…………その反応、容認してたワケ?コレを」
また新たに押収したカメラを手に突然そんな質問が飛んできた。
「何も知らなかったけど、やってましたって言われても驚かないってだけ、かな…」
「……ふーん」
「………」
「じゃあ、こんなことされて、どう思った?」
「、なんでそんなこと…」
「シゴト。報告書にいる」
「…置いた理由は判らないから、なんとも言えないけどやめれるならやめてほしい」
「はあ?そういうのいらねぇ。普通にキモいですって言ってくんない?」
眉間にシワが寄って柊くんの人相が悪くなる。風紀と言えど、見た目はヤンキー。怖えーよ。
「擁護が一番ダルいから。キモいで充分。それとも何?絆されてんの?」
「別にそういうわけじゃ、」
「なら、キモい。いい?」
「流石にもう少しオブラートに─」
「無理」
容赦がない。
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shiori
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