「…あのー、なんですかこれは、、」
「分かるだろ、読め」
「なんで!?」
「全部載ってるぞお前が知りたいこと」
「ええっ……」
部屋にお邪魔してそのまま明かりのついているリビングへ向かったら、開口一番に普段彼の読んでいるびーえる本を読めとかいうとんでもない提案をされた。なんでこれに載ってるんだよ答えが。
「手早く知りたいなら34ページからだ」
「いや、雅也が説明してくれたらよくね…?」
「自分で理解したほうがいい。読んだ上で、お前がどうしたいかだな」
「は…、どういうこと…」
「いいから読め。俺はその新刊を読む」
なんでだよ。
ツッコミをいれたところで既に新刊とやらを読み始めてしまった目の前のとんちんかん。あんなに俺に話してたくせにいざってときは話してくれないのマジでなんでだよ。
「ほんとに読んだら分かんの?」
「ああ、多分な」
「…………」
「安心しろ純愛ものだ」
「…そこはどうでもいいって」
「過激な方がいいならあるぞ」
「これでいいです!」
後ろの本棚からチラ見せされた物がひと目で分かる程どピンクだったので慌てて目の前の本を掴んだ。さっさと読むしかない。ただの漫画だ。
(34ページ─って言ってたよな)
パラパラとそのページまで飛ばしたら、ちょうど表紙の子が1人で触っていて全くイけないシーンだった。状況としては確かに同じ。読み進めたら相手の人がタイミングよく帰ってきて適当にいちゃつき始めたが、表紙の子がイけなくなったと打ち明けたら後ろも触らないといけないみたいなことがさらっと相手の台詞に書かれていてそのまま後ろも触ってもらって無事解決────
いや、この二人はそれでいいだろうけど?!
後ろも、触らないと…いけなくなった?
その後も軽く読んだけれど、ピロートークな部分には的を得た他の策は無さそうだったので本をそっと閉じた。そして静かに新刊を読んでいる雅也を見る。
「読みました」
「ご苦労。そういうことだ」
「いや!そういうことって、触り方とか分からないし…!」
「別に1人でやれとは言ってない。お前が許す第三者に頼めばいいだろう」
「……雅也ってこと?」
「………は?」
「他の人に説明するのも頼むのも嫌だし、許せるって言われたら雅也しかいないんだけど…」
「ちょっと待て落ち着けなんで俺なんだ」
「なんでって今理由言った」
「…そうだった」
表情は相変わらず分かりにくいが、珍しく動揺しているのが見てとれた。それもそうか、提案した自分に返ってくるとは普通思わないだろう。同じ立場なら俺も動揺する。
「でも、お願いするにしたって一方的にいきなり人のお尻触れって雅也も嫌だよな」
「それは問題ない」
問題ないのかよ。
「…えーと、じゃあ──…あの……お願いしてもいい、?」
正直、自分のせいとは言え2日イけずに焦れったさも溜まっているので問題ないなら早くすっきりしてしまいたい。
「本当にいいのか」
「うん」
「…そうか、」
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shiori
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