「……も、もしもし……いま、ちょっといい……?」

『?、ああ……どうした?』

「………………」

『………鈴葉?』

「あのですね…」

『なんだ』

「………──いや!!!やっぱちょっと考え直す!!!」


返事は聞かずにアイコンをタップして通話を切った。その画面に表示されている時刻は20時。

日付を見れば早いもので明後日からはテストが始まる。勉強は滞りなくできているし食堂へもちゃんと行っている。親衛隊の皆とも楽しく過ごしている。

ただひとつ、問題が発覚した。


「……………」


それは昨日、ちょっと溜まってきたかも、と思ってトイレで適当に済まそうとしたら驚くことに1回もイけなかった事。

決して勃たないわけではなくて、あともうちょっと─というところでお尻の奥が物足りなく感じてイけなかった。しかも何故か乳首も勃ってて恐る恐る触ってみたら逆に疼きが増して即止めた。

見覚えのない感覚に怖くなりその日は無理矢理寝て落ち着かせたのだが、今日なら大丈夫かなと試してはみたものの結果は同じ。イきたくてもイけない最悪の状況で余計にムラムラもしてくる。このままでは精神面でテストに響いてしまいそうでとりあえず相談できそうな雅也に電話したのだ。言わずに切ったけれど。

何せ内容が内容なので勇気がいる。

「!……」

どうするんだ俺、と悩みながら意味のない深呼吸を繰り返していたら早速雅也の方から電話がかかってきた。

「……も、もしもし」

『どうしたんだ』

「………いや……その、、」

『彼氏ができたか?』

「できてないし!!!!」

『違うのか……てっきり報告されると思ったんだが』

「……しません、、」

『じゃあなんだ』

「……えーっと、、わ、笑わない?」

『?、努力はする』

ふう、と今度は緊張をおさえるために深呼吸する。

「…あの、──いつからかは分からないんだけど、久しぶりにひとりでやったらイけなくて……こういう時どうしたらいいかなって………」

『………………』

「………………」

『………………』

「き、聞いてる……?」

『─悪い、もう一回言ってくれ』

「だ、だから…!ひとりだとうまく、イけない…っていうか、、」

『…………勃たないのか?』

「いや、勃ちはするけど………」

『──そうか。事情は分かった、今からこっち来い』

「え…?、うん」

『鍵は開けておく』

「、わかった」


5分程続いたその通話。
想定外の流れに暫く携帯を耳に当てたままフリーズする。自分的には電話で何かいいアドバイスが貰えたら大助かりだったのだが、彼の部屋へ行くことに。

会って話す方が気恥ずかしいじゃん─。



mae ato



132/143 / shiori








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