昼休み。
俺は今予めお昼ご飯を買っておかなかった事をものすごく後悔している。役員になってからは基本授業中に買いに来ていたせいで完全に気を抜いていた。この昼のゴールデンタイムに購買が空いてるわけがない。
(近くで食べるからって余裕こくんじゃなかった…)
ホイップ系のパンは普通に残っているため売り切れる心配はなさそうだが、人気のカツサンドと照り焼きバーガーが戦争状態だ。
それでもおばちゃんの会計裁きはプロフェッショナルで素早い。数分待てば買えるだろう。
勿論この勝負に参戦する気はさらさらないので最後尾付近から皆の様子をそれとなく見守っていたら、前にいた生徒が人波に押されて俺の方に倒れてきた。
「、大丈夫?」
「あ、ごめんなさ──えっ!!!鈴葉様?!?!」
「………………え、」
その子がそう声をあげた途端、伝言ゲームみたいに情報が広がっていきあんなにも必死だったはずの皆が一斉に俺を見た。瞬きをする度にレジまでの道が綺麗に開いていくじゃありませんか。
なにこれ怖い。
「あら鈴葉くん、この時間は珍しいねぇ。パンはこれでいいかい?」
そんな異様な状況を物ともせず、いつも通りおばちゃんはホイップパンを手にとりニコニコしていて、、
「……そ、それで……いいです…」
俺も道を開けられて注目されている以上取りに行かないわけにもいかないので小走りでカウンターまで行って学生証を提示した。ピッとチップが読み込まれたのを確認したら即座に来た道を戻って購買から離れる。
道中ごきげんようやらお疲れ様ですやら色々と聞こえたけれど適当に会釈しながらスルーだ。副会長みたいにはできない。
まだ後ろの方の生徒達はこちらを見ているが、前例の皆は何事も無かったかのように購買戦争を再開している。道ももう無い。
(なんだったんだ今の…!)
一瞬空気変わりましたけど!?
「あーー!!!鈴葉様〜!!こっちです〜!!!」
「!、」
今度は反対側から…!と思ったら有馬くんが大きく手を振っていて席の場所を教えてくれた。先にとっておいてくれたみたいだ。周りの視線がまた集まったけれどそれでも食堂よりは全然マシ。
俺も軽く振り返して席へと駆け寄った。
「お久しぶりです!!」
「こ、こんにちは」
「久しぶり有馬くん。藤崎くんはさっきぶり。今日はふたり?」
「あ、、東先輩と志井先輩はあちらです」
「あっち──」
いや遠!!!!!!!
藤崎くんの指差した方を見れば、壁際の席で東くんと志井先輩が座っているのが見えた。
今回もあの二人は離れて座るらしい。
「鈴葉様!体育祭何出るんですか?」
「ん、まだ何にも…去年はパン食い競争出たけど」
雅也にクリームパンが特大サイズで出るって言われて即決した思い出。当日周りに可愛い子が多くて浮いてたことは内緒です。
「二人は何出るか考えてる?」
「俺は学年リレー出たい!あと100m走!」
「僕は、障害物競争に出たいです」
「おお……走る系か。また決まったら教えて…!」
「はい!鈴葉様も決まったら教えてください」
「うん」
何出ようかなあ。
クリームパンは惜しいがまた存在感が浮くのはごめんなのでパン食いは無し。
まあその前に中間テストを頑張らないとだ。
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shiori
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