「!、藤崎くんどうしたの!?」

パンのいい匂いがしてきたなぁと暢気に思いながらリビングへ戻ったら美味しそうな朝食を前に泣きそうな顔で座っている藤崎くんが待っていた。

「…す…すみません、癖で自分の分も勝手に作っちゃいました…っ」

「え、いや、いいよ?一緒に食べよう」

「…っ、いいんですか?」

「うん」

むしろ作ってもらってる身で自分の分は作るなは意味が分からなすぎる。俊は食べないけど。

「あ、ありがとうございます」

「全然気にしないで…!怪我したのかと思ってびっくりしたから何ともなくてよかった」

「、」

「それじゃあ、いただきます」

焼きたての食パン、ベーコン入りのスクランブルエッグに可愛く切られたフルーツとサラダ。

まずは見ただけで分かるふわふわのスクランブルエッグからスプーンで掬ってひと口食べる。

うん。美味しい。

マジで俺の周りに料理上手が居すぎて贅沢だ。

「あ、あの…お味は、、どうでしょうか…?」

「めちゃくちゃ美味しい!」

心配そうに感想を聞いてきたのを大丈夫だと肯定したらパッと嬉しそうな表情に変わって俺も嬉しくなる。藤崎くんの表情って周りに伝染する力があるよなぁ、子犬みたいな?

「あ、この前くれたマカロンも美味しかった。ありがとう」

「─よかったです…!」

「聞くの遅くなったけど、クッキーファクトリーはどうだった?楽しめた?」

「は、はい。楽しかったです。七恵さんも、鈴葉様のお話をしてくださったので…」

俺の話。

藤崎くんの雰囲気的に変なことは言ってなさそうだが、如何せんやらかしている分一瞬背中が冷たくなる。

でも、副会長に伝えたほうが良い事は何も無さそうだ。

「そうなんだ…!手作り体験ってマカロンだけやってんの…?」

「いえ…!体験のところにあるレシピなら基本なんでも作れると思います。毎月色んな国のお菓子の材料が輸入されるんですけど、僕が行ったときはフランスだったのでマカロンにしました」

「なるほど、規模がでかい……」

「すごいですよね…!」

俺はちらっと携帯でHPを見ただけだが建物も凄かった。体験でそこまで気合い入っているならそのうち社会見学施設とかになりそう。うちの学園が採用したりして。

「あっあの、、お昼なんですけど…」

「?、うん」

「いつもどこでとられてますか…?」

「えー、と……庭、生徒会室、自分の部屋…かな。あ、これから夜は食堂に行くことになったんだ」

「は、はい!隊長から聞いています」

流石だ、情報が早い。
言う必要もなかった。

「お昼なんかあった…?」

「あ…その、鈴葉様と皆でご一緒してもいい許可がおりたので、鈴葉様さえご迷惑でなければ…っ」

「う、うん。いいよ」

許可が必要だったことが驚き。生徒会でそんな決まりはなかったはず。親衛隊ルール的な…?そのあたりの常識は知らないので気軽に口も出せない。

「皆で食べるなら、そうだなぁ、」

前に一緒に食べたところは美術準備室だが、普通に考えて食べるところではない。テラスは柄じゃないし、購買近くの広場か?食堂ほどではないけれど、何席かある。

「購買の近くのところって分かる?」

「あ…カフェスペースですか…?」

「そう…!そこかな。席がもし埋まってたら外行くしかないかも。机なくなるけど…」

「鈴葉様がいらっしゃればお席は大丈夫だと思います…!」

「え?」

「皆にも伝えておきます…!」

「う、うん。ありがとう」



mae ato



130/143 / shiori








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