「つ、疲れた……」
「お疲れ様です」
食堂から解放されてすぐ部屋へ直帰した俺はふかふかのソファーに寝転んでこの数時間の緊張を吐き出す。
俊は久しぶりに部屋の前で待っていたから招き入れた。もう慣れたもんだな。
「デザートの味あんまり覚えてない……今までで一番人が多かった気がする……」
「今は部活動もありませんから」
「はあ……テスト期間よりこの1週間が嫌かも。俊はもう補習終わった?」
「……ええ、まあ」
「じゃあ明日からまた─ってそうか、夜は食堂になるんだった、、」
「そのことなんですけど、暫く謹慎することになってしまって」
「へー…………え?」
謹慎?
思わず寝転んでいた体を起こした。
「朝も昼も、お伺いすることができません。勿論夜も」
「、ど、どのくらい?」
「テスト期間を挟むので少しややこしいんですけど、次お会いできるのは3週間後くらいでしょうか」
「3週間!?ていうか、謹慎って、なにしたんだよ…」
「すみません、それは言えません。鈴葉様は関係ありませんので安心してください」
「………。連絡はとれんの?」
「いえ、できません」
「……そうなんだ」
「それと、」
「!、え───」
どさっと押し倒されて、何を言うのかと思いきや
「セックスもできませんから」
だなんて。
連絡もとれないのはちょっと寂しいとか思った自分が不憫だ。
「…、それは、別に…大丈夫だって…」
「俺は困ります」
「勝手に困られても困るわ!」
そもそも俺が記憶してるのは数回だけだし普段自分で抜く事なんて少ない。2年になってからは心配になるくらいほぼない。中学生の頃の方が抜いてたと思う。だから3週間の間に抜く日が1回でもあれば感動するかもしれない。
いや………?まず最近自分ではやってなくない…? その記憶している数回くらいでしか出した覚えがない。
生徒会は確かに忙しいけれど、この年齢でそこまで枯れてるわけもない。
じゃあ、?
いやいや、まさかそんな。
「あの、さ…………」
「はい」
「……その……俊は、…俺と……どのくらい、してる……?」
俺の頭で他に思いつく理由はこれくらいだ。あとは病気。保健室へ相談コース。
「…。正確に数えているわけではありませんが、ほぼ毎日かと」
「ほ、ほぼ毎日」
「はい」
何を今更、みたいな顔で肯定してきた目の前のヤバイ人。
またそれに気づいてなかったヤバイ人その2は俺。
しかもほぼ毎日。 そりゃあ俺が起きてるときには勃たないだろうなあ。
「もしかして、今日もするつもり…?」
「当然です。明日からできなくなるんですから」
「…………」
「お疲れのようですから気にせず寝てくださって大丈夫ですよ」
気遣っているようで気遣われていない矛盾の言葉。
ちょっとこれは本気で冷静になったほうがいい。正直あの日に暴露されて以来まだ続いているとは思っていなかった。そんな素振りもなかったし。このままじゃこれからも普通にやられそうだ。今日も危ない。健康状態も心配。
「俊って俺の事、どう思ってんの?」
「─突然どうされました?」
「気になって」
「、お慕いしておりますが」
「具体的にどういうところが?」
「すべてです」
「そっか」
「…納得されてませんね」
「なんか…………、俺の体だけが好きみたいで、説得力ない」
「……そんなこと」
「じゃあ、寝てるときにやる理由って?」
「…………」
「それに、付き合ってもないのに勝手にやるのはおかしいと思う」
付き合ってたらいいのかも微妙なところだが、とにかく俺が承諾してないのに手を出すのは流石に駄目だ。もし相手が俺じゃなくて他の人にやってたとしてもヤバイと思うからこの意見は間違ってない、はず。
「だから、えっと…俺が寝てるときとか、いいって言ってないときにやるのはやめてほしい」
これでまた巧く言いくるめられたら終わり。逃げ道なし。完敗。
「…………わかりました」
「え、」
「これからはお誘いを受けるまでやりません。今日もやめます」
「……、、」
ずっと覆い被さっていた体が離れて座り直した彼はそっと小指を差し出してきた。俺の言い分は伝わったらしい。
「指切りしますか?」
「──嘘ついたら、どうすんの?」
「親衛隊を辞めて、もう貴方に近づきません」
「…そんなこと、いいの?」
「はい」
「………わかった。約束」
自分も起き上がって、小指を合わせた。
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shiori
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