*戌川視点


「……、、どうしたんだ……他の席もまだ空いてるだろう」

「………」

「…………」


食堂。
鈴葉から今夜の晩飯はいらないと連絡が入り理由を訊ねれば、ついに副会長に連行される事になったそうで。

有り難く拝ませて貰おうと早めに席取りも注文も済ませていたのだが、しれっと甲斐凪が同席してきた。久しぶりに顔を見たが、少々やつれている。俺が思っているよりも現代文に翻弄されているらしい。

(まあいいか……)

大人しいなら問題はない。
俺は俺で生徒会を楽しませて貰おう。

いただきますと定食に手を合わせたと同時、フロアに歓声が響きわたった。


先頭に会長、その後ろに副会長と鈴葉、最後尾に七恵がいる。

会長はいつも通り涼しい顔だが、鈴葉は意識をシャットアウトしているのか周りは一切見ない。他の二人はファンサービス尽くしだ。


そういえば、うるさいのは好きじゃないやらご飯の量が多いやらで食堂は編入時から極力避けていたが、部屋では普通に食べていたし体育祭や文化祭は平気そうだった。

これまであまり気にしていなかったが、何か特定の条件でもあるのか……?

実際苦手でも出向くことはできるのだから深く考える必要もないか。

「…3-S」

「?」

突然ぼそっと呟いた甲斐凪の視線の先─見知らぬ生徒がひとり生徒会席を見つめていた。

(コイツはコイツで全生徒の名簿が頭に入ってるのか?)

漫画や小説ではよく甲斐凪のようなタイプは登場するし普通にそういった作品を嗜んだりはしているが、いざ身近に居たら居たで恐ろしい。何より当初の予定より俺は接触しすぎだ。一歩下がって鈴葉をとりまく状況をだな──


「先輩方、失礼します」

「!、」

「……………」

「ってより、ちょっと訊きたいことがあるんだけど、あんたに」

「……………」

「心当たり、ありますよね?」

「───だったら?」

「別に。あとで応接室、来て貰えたら」


では、と去っていったのは風紀副委員長の柊。一瞬周りがざわついたが、二人の空気が冷めていたせいで騒がれることはなかった。おかげで生徒会側はこちらに気付いていない。

いや、ちょっとまってくれ。
応接室だと…?

「…………甲斐凪、お前──」

「もう済んでる。あとはどうでもいい」

「……は?」

「癪に障りますが、せいぜい楽しんで」

「あ、ああ……」


訳はわからないが、とりあえず頷いておいた。




mae ato



127/143 / shiori








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