*丹羽寺視点


「あ、お疲れ龍也。樋坂君知らない?」


夕方。
授業の振り返りやテスト範囲をある程度片付けて生徒会室へ来てみれば、珍しく樋坂君の机が作業途中のままだった。

タイミングよく仮眠室から龍也が出てきたので聞いてみれば何故かその仮眠室を指差している。


「仮眠室?」


「寝てンぞ」


「え?」


「じゃあな、」


「あ、ちょっと待っ──」


バタン──と詳細を聞く前に生徒会室を出ていかれてしまった。


最近になって何かと樋坂君に接触している気がする。

(何かあるのか……?)

ため息をつきながらひとまず彼を起こすため仮眠室へと向かう。半信半疑だったが、そこには本当にぐっすりと眠っている彼が。


「──樋坂君、」

「……………」

「樋坂君、」

「………、……んー…」


軽く叩いて声を掛けてみるが寝返りを打っただけで起きそうにない。見たところ龍也が手を出したわけでは無さそうだ。ただ一緒に寝ていたという事実もそれはそれで不思議でならないが、昔から龍也の行動は予測できないので考えるだけ無駄だろう。


「樋坂君、」

申し訳ないけれど、今度は強めに揺さぶってみる。

「………、─う、………なに……」

「起きた?もう夕方だよ」

「ゆうがた…………」

ぱちぱちと瞬きを何度か繰り返して、視線が僕に向けられたので手を振ってみた。

「………、……え、……」

「おはよう」

「お、はようごさいます……!、あれ、えっ、」

「龍也ならもう居ないよ」

「!、…そ、ですか」

「念のためなんだけど、何もされてないね?」

「は、はい何も」

「良かったよ。じゃあ僕は向こうで待ってるから色々と整えて」

「っ、すみません、すぐに」


恥ずかしそうにしながら頭を下げたのを見送って仮眠室を出る。
いつもきっちりしているからか、横髪がハネていたのがちょっと新鮮だった。

「いい加減、連絡先聞かないと」


あとは蓮の件だ。
本人が何も話さない以上、藤崎君から他に何か聞いている事があるかもしれない。




mae ato



125/143 / shiori








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