「……まただ」

中間テスト1週間前、それまでは特に忙しい業務は無いのだけれど、通常の雑務は日々貯まっていくわけで。

今日は毎週回収している目安箱の内容をまとめて実現できそうなものをリスト化していく作業があった。いつもは仕分けするだけなのだが、月に一回はこうして集計する。

会長と付き合いたいだの副会長に女装してほしいだの七恵先輩に調教されたいだのまーーーーーー色んな欲望が混じっている。

もちろんそういうものはパソコンに打ち込みもせずに後でシュレッダー行きだ。

ただ、さっきから5枚に1枚くらいのペースで''鈴葉様に食堂で食べてもらいたい''、''お昼だけでも生徒会の皆様で食事してほしい''、''樋坂様が食堂に来られるときはアナウンスしてほしい''などと、

俺が食堂に行きさえすれば解決する厭らしくもない要望が地味に票を集めていく。

「…………」

例え黙ってこの票をなかった事にしても日々副会長さんから滲みでている圧がそろそろ怖い。なんでそこまでして行かないと─って単に学園の風習だからだろうけれど。1年経っていようが外部の俺には染み着かない感覚だ。

「……テラスの花の種類を増やす、黒板消しクリーナーの買い換え、図書室の本の増量、第2視聴覚室の空調修理…」


ああ、もう、この中で俺のやつが一番経費かからないから…!

1人虚しく迫りくる現実にため息をついていたら、ガチャリと生徒会室の扉が開いた。


なんと会長だ。


「お、お疲れ様です」

「、丁度いい。こっち来い」

「え?」


そう言って彼が向かったのは仮眠室。


は?



「どうした?」

「いや、あの……な、なんで」

「お前には関係ねぇだろ。黙って来い」

「ハイ…」

関係あるくね?!なんて反論する勇気は無いので大人しく俺も仮眠室へ向かう。訳の分からない事を言われてから初めて会うので内心冷や汗だらけだ。加えてここにはいい思い出もない。


「ネクタイとベルト、そのベストもいらねぇ脱げ。暑苦しい」

「え」

「シャツも入れずに出せ。ボタンも上まで閉めるな」

風紀を守って制服着てるだけなんですけど!?

「脱がねぇなら脱がせンぞ」

「脱ぎます」

「早くしろ」

ふああ、と欠伸をしながらベッドに寝転んだ会長様。

焦りながら言われたものを脱ぐ俺。

恐怖体験か……?


「脱ぎました」


そうしたら、黙ってベッドを指差される。

確かに寝転べるスペースは充分にある。
あるけれども。

「…ど、どういうことですか?」

「アァ?お前は今から枕だ。ここに寝ろ」

「ま…」







「まくら…?」

「ああ」


枕?????


「そう、いうのは俺よりも親衛隊の方にお願いしたほうが…?」

「アイツらはうるせぇ。寝れるか」

「……」

「……」

「………」

「なんだ、全裸にでもなんのか?」

「すみません今すぐ寝ます」


断れば断るほどよくないタイプの人だこれは。


「わ…!!」


向かい合うのは気まずすぎるので背を向けるように寝転がれば、腰をがっつり抱き込まれた。

特有の香りが強くなる。


「俺が起きるまで動くなよ」

「……はい」



頑張って寝るしかない。




mae ato



124/143 / shiori








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