「え……どこ行くんですか?」

洗面所から出たら、さっきまでラフだった格好が小洒落た感じに変わっていて何やら身支度をしていた。一瞬煙草のような物が見えたのは見なかったことにしようと思う。


「外」

「外?」

「来るか」

「えっいや…俺は部屋に戻ります」

「なら、適当に出ていけ。じゃあな」

「は、はぁ……」


バタン、と颯爽と出ていった会長。
部屋に残された俺。


え……?なに????

結局なんで連れてこられたの???

意味不明なこと言うためだけ?


「マジで何……?」


まあいいか、、さっさと部屋に戻ろう。ここに用なんて無いし。ただ戻ったとしても学生証が無い。俊が開けてくれないと部屋に入れないのだ。

もうお風呂上がってるかなあ…
もしかしたら廊下で立ち往生かも。


「!、あ」


俺が触るより前に、ガチャっとドアノブが下がって手を引っ込める。


忘れ物か?




「鈴葉様…!、」

「!!、俊?!」

「ご無事ですか?」

「う、うん俺は全然─」

「桐神は?」

「会長はさっき、どっか行ったけど、」

「なら、結構です。戻りましょう」

「う、ん」

「こちらお返ししておきます」

「!、ありがとう」


さっと俺の携帯と学生証が手渡された。


え?


なんか普通に入ってきたけれど、ここは会長の部屋だ。

俺からは鍵を開けていないし、会長が戻ってきて開けてくれた訳でもない。


つまり俊が開けたわけで。


俺の部屋は百歩譲っていいとして、これはマズいんじゃ…。しかもなんでまた居場所が分かったんだ?今回は携帯持ってなかったし、GPSじゃないのって本当だったのか。でもそれ以外に知りようないよな…?まさか体内とかに…?

うわー……やりそう…

会長の謎行動からの俊のヤバイ行動に、俺はもう大混乱だ。


「鈴葉様、」


「!、、」


「早く戻りましょう」


にっこりと、当の本人はいつもどおり微笑んで手を差し出してきた。


「…………う……うん」


そして俺も、いつもどおりそれを握りかえした。








*桐神視点


「?、マスターカード……?」

「あぁ」

「そんな話聞いたことはないね…基本電子システムで施錠は変えれるから、、何かあったときも書き換えれば済むよ」

「登録数に制限ってのはあったか、」

「ひとつしか出来ないと思うけど、、」

「と思う、」

「学生証のシステムなんて担当したことないんだ。言い切れないよ。事務の仕事なんだからそっちに聞くほうが早いだろ。防犯上答えてくれないだろうけどね…突然どうしてそんなことを?」

「…………さあな。蓮はどうした」

「今日は来ないって。学外の事も答えなかったよ。自分で解決するってね」

「フン、」

「本当にどうしたの?気にかけるのも珍しいじゃないか」

「…─ピンとキてねぇお前の方が珍しいぞ、晃」

「……、そう?、、色々と用心深いだけさ」




mae ato



116/143 / shiori








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