「はあ!? 何よ、耳掻きして良いんでしょ?!」
    「んな事言ってねーよ」
    「じゃあなんで膝枕させてんのよ!」
    「はあ? 膝枕させてもらってるんだろ。ありがたく思えよ」
    「思える訳ないでしょ! ベルなんか膝枕したって嬉しくないわよ! っていうかタダ枕じゃないのよお! どいてよ!」
    「かっちーん、王子に対してなんだよ、その口の利き方。お前カナタの癖に何さまのつもりだよ」
    「はああ!? なーにが王子よ! あんたなんて王子は王子でも堕王子じゃない!」
    「あ?」
    「何よ!」
    「はいはい二人とも喧嘩しないの! ベルちゃん、膝枕して欲しいなら私がしてあげるから、それで我慢しなさい」
    「頼まれてもいらねーし、引っ込んでろカマ野郎」
    「いやぁあん、ベルちゃんったらひっどぉおおい!」

     先程までの仲良しムードはどこへやら。あれよあれよという間に険悪な空気を作りだした二人は、膝枕を解き敵意むき出しで睨み合いを始める。
     スクアーロは巻き込まれない内に退散しようと、酒瓶を抱えてゆっくりと談話室の出口へと歩を進めた。
     さて、出口が近付いてきた。という所で、またも厄介事が一つ転がり込んでくるのがヴァリアークオリティ。スクアーロが出て行くのを阻むかのように、出入り口からまた新たな人物が顔を出した。

    「貴様らぁああ! 何を騒いでいるかぁああ!」

     何やらやたら不機嫌そうなレヴィ・ア・タンである。

    「レヴィ……っつーかテメェこそ声がデケェぞぉ……」

     結局逃げられないのか、という気持ちで軽く頭痛がしてきたスクアーロは頭を押さえながら溜息をついた。
     そんなスクアーロの気持ちなど露知らず、レヴィはスクアーロを押し戻すかのようにはねのけながら談話室内に入ってくる。半ば逃げ出す事を諦めたスクアーロは、そのまま押されるがままに談話室に戻った。

    「貴様ら! 今何時だと思っているのだ! 子供でもあるまいしぎゃあぎゃあと騒ぎおって……ボスの部屋の前まで声が届いていたぞ!」

     ボスという単語を聞き、カナタがむっとした表情を見せる。

    「ボスの部屋の前で何してたのよ、レヴィ」
    「もちろんボスの身辺に異常がないか見張りお守りしていたのだ!」
    「あいつにテメェの護衛なんか必要ねえ゛だろぉがぁ」
    「必要とされる時では遅いのだ! ボスが危険な目に合わないよう、いついかなる時でも、しっかりと目を凝らし見張り! 自身の時間を全て割き見守るのがこのレヴィ・ア・タン引きいる雷撃隊の務め!」
    「んまぁ、まだそんな事してたの、レヴィ。そんなんだからアンタ鬱陶しがられるのよ」
    「んなっ……!?」

     心底呆れたような声を出すルッスーリアに、レヴィは驚愕の声を漏らした。目を見開き拳を握り、「俺は……俺は鬱陶しいのか……」等と呟きながらわなわなと震えている。自覚が無かったらしい。

    「そうだ、レヴィ」

     名案がある、とでも言いたげにカナタが両手をぽんと叩いた。

    「ボスのお役に立ちたいなら、私に耳を貸さない?」
    「は? 何だ、どういう事だ?」
    「却下だぁ」

     レヴィが不思議そうな表情でカナタに事情を聴こうとした瞬間。
     間に割って入って来たスクアーロはまだ何も言っていないカナタの提案を却下した。

    「ちょっと、まだ何も言ってないでしょ!」
    「どうせ、耳掻き云々だろうがぁ! 駄目だ、却下だぁ!」
    「おい、待て、何の話だ。さっぱり状況が分らんのだが」
    「テメェには関係ねぇ! 鬱陶しいから引っ込んでろぉお゛!」
    「う、鬱陶しい……だと……」

     何やらショックを受けたらしいレヴィはそれ以上何も云わず、その場に片膝をつきがっくりとうなだれた。それに対し、誰も何の反応も示さず、会話は再開される。

    「ちょっとお! スクは耳を貸してくれるつもりないんだから口挟まないでよ! レヴィなら貸してくれそうだったのに!」
    「レヴィは駄目だあ! レヴィは!」
    「なんでよ!」
    「なんでもだ! 絵面的になんかヤベェだろぉがぁ! とにかくレヴィは却下だ! 却下!」
    「っつーか、カス鮫先輩、なんだかんだで結局自分が膝枕して貰いたいだけなんじゃねーの?」
    「あ゛あぁあ?! んな訳ねーだろ!」

     何やらスクアーロの思惑とは別方向に話が進み始める。

    「あらあらあらぁ、そうなの? スクちゃん」
    「違ぇよ! 俺は一度嫌だっつってんだろうがぁ! お前も聞いてただろぉ゛!」
    「男の嫉妬は見苦しいよ、スクアーロ」
    「だあ゛ああからちげぇっつってんだろうがぁあ!」

     マーモンにまで言われてしまい、眉間に色濃く皺を寄せたスクアーロは力の限り否定する。が、もう遅いようで。

    「しっかたないわねえ。膝枕してあげるからとっとと座りなさいよ」

     と、やたら上から目線なカナタが、ソファに座りぽんぽんと自身の膝を叩いて鼻で笑って来た。


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