「部屋割とかどうなってるの?」
    「二部屋とってある。ボスの分に一部屋、残りの者で一部屋だ」
    「う゛お゛ぉい!!ちょっと待てぇえ!!」

    さも当然のように言ってのけたレヴィに、今度はスクアーロが声を上げた。彼はまだブーツを脱ぎ終えておらず、片足だけ浮かせながらこちらに近づいてくる。その姿はなんとも滑稽だ。

    「俺達とカナタを一緒の部屋にする訳にはいかねぇだろぉ!」
    「なに、スクアーロ。我慢出来ずに夜中私に襲いかかる気?」
    「んな訳ねぇだろ。かっさばくぞぉ、このアマ!」

    軽く睨まれカナタは面倒くさそうに右手で頭を掻く。

    「別にそういう気遣いは良いよ。今更気にするような仲でもないじゃないの」
    「まったくだ。それにこの二部屋はふすま一つで区切られているから、いつでも行き来できる。どういう部屋割にした所で、あまり意味はないぞ」
    「何だそれ、マジでここ安宿仕様すぎんだろぉ……って、そうじゃねぇ!とにかく、だ!部屋割はカナタに一部屋と残りは野郎共で使う!異論は認めねぇぞぉ!!」

    有無を言わさぬ勢いでスクアーロが凄む。しかし片足を上げて突っ立っている状態なのでいまいち決まらない。寧ろ笑いを誘う。
    まあそんなスクアーロのお間抜けな体勢はともかく、珍しくザンザスも文句を言わないので部屋割は男女別と言う事で決定になりそうだ。彼が文句を言わないとなればレヴィもカナタも途端に大人しくなる。
    カナタに至っては瞳を輝かせて、ボスってば、私に気を使うとか紳士……!なんて感激していたが、実際の所ザンザスに、一人部屋だったら誰が俺の面倒見るんだよめんどくせぇとかそんな魂胆がある事は彼女は知る由もない。あと、彼は割と寂しがり屋の気があるので、それも関係しているのだろう。
    さて、寂しいといえば、一人部屋にされてしまったカナタだ。

    「ねえスク。部屋割には文句言わないわ。でも一人じゃ寂しいからマーモンも一緒じゃ駄目?」
    「また僕かい」
    「まあ良いだろぉ」
    「やったあ!」
    「いい加減僕の意見も聞いてよ」

    マーモンの意見が華麗にスルーされた所で、部屋割も決まった事だしヴァリアーメンバーは部屋へと移動を始めた。

    ***

    「うっわー、畳久しぶりー!」

    カナタが部屋に入るなり感嘆の声を上げた。久しぶりの畳に足を乗せ、その独特の感触を楽しむ。いつも畳で過ごしていると面倒だったりフローリングの方が良いと思いがちだが、こうしてたまに使うだけならば不思議と素直に楽しめる。そこはやっぱり日本人だからなのかもしれない。
    そうして暫く静かに部屋の中を眺め楽しんでいたのだが、段々とカナタは落ち着きがなくなり、棚を開けたり掛け軸の裏側をチェックしたりツボの中を覗き込んだりと、部屋の中を物色しだした。それを後ろからマーモンが呆れた様子で眺めている。

    「少しはしゃぎすぎじゃない?そんなんじゃ今日一日で疲れちゃうよ」
    「平気平気。こういうのは楽しんでなんぼでしょ、マーモンもテンションあげなよ」
    「まあ、タダだと思えば良いものかも知れないけどね」

    結局、金関連でしか楽しめないのか。カナタが苦い表情をマーモンに向けるも、彼は大して気にもならないようだ。飄々とした様子でローテーブルの上に置いてある茶請けを漁っている。

    「う゛お゛ぉい!邪魔するぞぉ!」

    大声と共に、ふすまが勢いよくスライドした。スクアーロだ。そちらへ視線を移してみるとふすまの向こう側には、ザンザス達がの姿が揃っていた。なるほど、レヴィの言っていた通り本当にこの二部屋はふすま一つで繋がっているようだ。向こう側の部屋は複数人で使うだけあってカナタ達の部屋より広い。

    「返事も待たずに開けないでよ、えっち」
    「誰がエッチだ!……ほらよ、テメェの荷物だぁ」
    「ありがと」

    スクアーロが乱暴に旅行鞄を畳の上に置いた。文句を言っていたのにカナタの荷物を運んでくれている辺り、なんだかんだ言いつつも面倒見が良い男である。

    「ねえねえ、そっちの部屋はお札貼ってあった?」
    「ああ?札ってなんの事だぁ」
    「こういう古い感じの旅館には、お札がつきものなのよ」
    「意味が分かんねぇぞぉ!聖書の代わりに置いてあんのかぁ?」

    不思議そうな顔をしているスクアーロを押しのけ、隣の部屋を覗きこむ。とりあえずまずは愛しのボスのお姿を確認だ。それをしないと始まらない。
    ザンザスはレヴィに用意させたのか、和室には不釣り合いな豪華な装飾の施されたイスに座り寛いでいた。こんな所に来ても、玉座は用意するあたり流石である。どんな状況でもゴーイングマイウェイ。素晴らしい、格好良い。流石我らがボス。しかしそれではお座敷を選んだ意味があまりない。
    そんな彼の横ではレヴィが甲斐甲斐しく世話を焼いていた。長時間の車移動で疲れているだろうに、彼は本当にボス至上主義を最前線で突っ走っている。

    「なあ、お札ってなに」

    先のやり取りに興味を持ったのだろう、ベルがカナタに近づいて来た。

    「幽霊が出たり心霊現象が起こる部屋ってお札とか貼ってあるのよ。だから、色々探してみて、お札が見つかったらその部屋はヤバイ部屋ってわけ」
    「ええええ!?ちょっとぉ!何よそれぇ!」
    「へー、面白そーじゃん。王子も探してみよ」
    「いやぁよぉ!ベルちゃん、やめてちょうだいよぉ!」

    テンションを上げるベルとは対照的に、ルッスーリアは顔を青ざめさせくねくねと身をよじった。対してスクアーロは呆れ顔だ。くっだらねぇとぼやきながら、障子を開き窓の外を眺め始める。

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