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せっかくだから告白でもしましょうか(ドラ・スネジャイ) [ 15/196 ]

ずっと昔から彼だけを見ていた。



昔の彼は絵に描いたようなガキ大将だった。弱いものイジメみたいなこともよくやっていたし、僕や他の誰かからオモチャを取り上げるなんて日常茶飯事。俺様の王様であの頃は彼が黒といえば白も黒になった。
平均より縦にも横にも大きい彼に面と向かって逆らえる奴なんていなかった。せいぜい彼の母親か先生に言い付けるとか、そんなことくらい。ああ、でもアイツは便利な道具で仕返ししてたかな。更にその仕返しをされることも多かった……ていうかほとんどだったけど。
僕は彼の隣で、ただ偉そうにしていた。
買ってもらったばかりのラジコンを取り上げられても、挙げ句それを壊されても、僕は彼の隣にいた。
それだけ彼が怖かったのだと思っていたが、どうも違ったようだと気付いたのは高校に入った頃だっただろうか。


昔から、無意識にずっと彼を見ていた。
高校に入っても彼の成長はゆっくりと続いていて、相変わらず縦に大きかったけど横にはそれほど大きくなくて、まあ平均的な肉とあと筋肉で構成されていた。
僕と彼の身長差はいつの間にか縮まっていた(彼を追い越せたといえば嘘になるけれどほんの数センチ差といったところまでこぎつけた)

彼の身長は未だに平均以上だし、その強さも衰えるわけでなし。とはいえ彼よりもっと強い人間なんて実は沢山いるわけで。つまりまあ、彼が最強である時代は終わった。周りの人間も少しずつ彼から離れていった。だけど、僕は彼の隣にいた。
その理由を考えて……それが「彼の隣にいたかったから」だと気付いた時、僕は昔から彼しか見ていなかったことに気付いた。


僕は彼が……好きだ。





時折見せる、友情に熱くなるところとか、子供っぽいところとか。どこが好きなのかと聞かれたらそんなところをあげるだろうけれど、実際にどこが好きかなんて自分でもわからない。それほど昔から、彼を好きだった。


「ジャイアン」


そのあだ名で呼んだのは何年ぶりだろうか。
彼が不思議そうな目で僕を見る。その目すら可愛いと思う僕は末期かもしれない。


さあ、どうやって振り向かせよう?
残念ながら彼が僕になびかないなんて未来はちらりとも思い浮かばない。だって彼だって僕を好きになるに決まってるのだ。そう思わなかったら、彼に想いなんて伝えられない。
多少卑怯な手を使ってもいいし、引いて引いて引きまくれば淋しがり屋な彼のことだからすがりついて来るだろう。どうやってでも、最終的に彼が僕を好きになればいいのだ。

さて――





せっかくだから告白でもしましょうか
(純情な君を意識させる手段にはもってこいだしね)



09.09.24

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