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南瓜のお化けが来るぞ!(ムカスコ) [ 138/196 ]

「今日はハロウィンですね、スコルプさん」


報告書の束を何だか泣き出しそうな目で睨んでいるスコルプに声をかける。と、それどころではないとばかりに睨まれる。

「アナコンディさんに再提出するようにでも言われましたか?」
「……ああ。だから今日は貴様に付き合っている暇はない」
「ところで知ってますかスコルプさん。今日はハロウィンですよ」
「だから、人の話を聞いてるのか」

怒っているのか語尾が荒くなる。が、それでも気にせず続ける。


「ハロウィンは、南瓜のお化けが出るそうですよ」
「は?」
「夜の十時に一人でいると連れていかれちゃうらしいですね。ああ、もう後三十分しかないか」


なんて出鱈目なことを言いながら、目や口をくり抜かれたあの南瓜がお化けとなってさ迷う様子を想像するが上手くいかない。ホシイナーで想像した方が想像しやすいかもしれないなと思うと、元々怖くなさそうな想像が更に怖くなさそうになった。
さすがにこんなことを信じる大人もいないだろう。と、スコルプの表情も確かめずに踵を返す。怒鳴られる前に撤退、だ。


が、



「え?」



服の裾がぐいっと引っ張られた。一体何が起こったのかと振り向けばスコルプの右手が裾を掴んでいた。

「スコルプ、さん?」
「……貴様が怖がっているみたいだから、一緒にいてやろうと思って、だな」

ムカーディアは目を見開いた。だって裾を掴むスコルプの右手は僅かに震えていたのである。
つまり、怖がっているのはスコルプのようで、ああこんなことを口にしたら笑ってしまう。ついでにスコルプに殴られでもするだろうか。

嘘ですよと今口に出せば、被害が少なくて済むのだろうけど。そんなこと勿体なくてできるわけがない。だから後日、真実を知るであろうスコルプに殴られよう。




だって南瓜のお化けなんてありもしないものを畏れる貴方が可愛いのです!



南瓜のお化けが来るぞ!
(まさか騙されるなんて!)



‐END‐



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