ダメダメ戦隊 | ナノ
第10話 鬼に金棒、バカに玩具
春は変な人が多くなる季節。
だが、この公園には春だろうと夏だろうと、秋だろうが冬だろうが関係なく変人が集まる。
まあ、つまり、俺達のことだよな
鬼に金棒、バカに玩具
「待たせたな!」
レッドは1番最後だというのに実に堂々とやってきた。だが謝りもしないのですぐグリーンに怒られていた。
「ちょっと、あんた何分待たせたと思ってるのよ!」
「……ゴメンナサイ」
なんていうか、素直なことくらいだよな。こいつのいいところって。
そんなことを思いつつ、ブルーはレッドを見た。いつも手ぶらで来るくせに、今日は何故か鞄を持っているようだ。
鞄自体はそれほど珍しくない。今時の若者が持っていそうな(しかしだからといってオシャレな訳でもない)ごく有り触れた印象のものだ。
が、それは妙に膨らんでおり……怪しいのだ。
それが遅れた理由だということはなんとなくわかる。そして、それが今日のブルーのため息の理由になるだろうことも。
だが、中身は何なんだ?
こればっかりは同じ馬鹿でないとわからない。だって自分とヤツは思考回路が違う訳だし。
「だが、今日はいいものを手に入れてきたんだぞ!」
レッドが得意げに鞄を見せる。
その中には……
中には…………
帰ろう。ブルーはくるりとレッドから背を向けた。
……もちろんすぐに捕まってしまったのだが。
* * *
「ブルー・マウンテン・ビックリ」
やや棒読みでそう呟きながらブルーは引き金を引いた。
彼の手に握られた『それ』からはビビビッと派手な音が立つ。
すると見えない光線に撃たれたようにして、『ぐあっ』なんて言いながらイエローが倒れた。
「…まだまだあっ!!」
呼吸を少々乱しながら立ち上がるイエローを、今度はグリーンの『それ』が狙う。
「グリーン・リバー!」
見えない光線がイエローに届く前にピンクが叫ぶ。
「ピンク・キャッスル!」
「ぐわあっ!」
そしてイエローは息を引き取った。
……なんてことはもちろんない。
「ブルー、ビックリじゃない。『!』だ!」
レッドからの発音指導が入る。
が、ブルーは華麗にスルーしてみせる。
そう、今は必殺技の訓練中。
レッドの持ってきた『ヨウレンジャー』の武器を模倣した玩具、『ヨウレン銃』を扱う訓練なのだが……
玩具なので光線が出るはずもなく(出たらとっくに地球は破壊されている)、こうしてヒーローごっこをするハメになっているのだ。
ちなみに必殺技名はレッドの考えたオリジナルだ。知っている単語を繋ぎ合わせたらこうなったと言っていたが、直訳すると『青山』『緑川』『桃城』……何故日本人の名字なのだろうか。
「しかし恐ろしい武器だな、Eコレン銃」
あ、こいつ名前まで勝手に変えてやがる。
「そうね……こんなに簡単に人の命を奪ってしまうなんて」
ん?
「ギセイになったイエローのためにも、この武器で地球の平和を守りましょう!!」
待て……
まさかこいつら、これを本物だと信じてる訳じゃないよな?
「この武器さえあればあのアンコとかいうやつらも倒せる……イエロー、お前がいないのは正直痛いが、必ず勝って、奴らの首をお前の墓に供えてみせる!!」
アンコじゃなくてアンチだろ、というツッコミはこの際後回しだ。
3人には『この武器は玩具だから見えない光線とか出てないから』と、
イエローには『この武器は玩具だから見えない光線とか出てないからお前は死んだ訳じゃないから』と、
説得するのにとても長い時間を要することになったブルーだった。
「たしかに死んだにしちゃあ痛くない気がするな!」
(……普通気が付くだろ)
‐end‐
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