花冷えにめまい

 クラピカはソファーに身体を投げ出した。頭をソファーにぐてんと乗っけて、身体の深いところにある息をゆっくり吐き出していた。その隣で私は、自分の手を開いたり閉じたりしている。
 
 頭はスッキリしていた。沢山の事を思い出したのに平気だった。一つ一つの物事が綺麗に整頓されていて、足りないものがストンと胸に落ちて上手く穴にはまった。泣き叫びたいくらいに悲しいけど、それ以上にとても大切な物を手にしていて、私の身体が私のものじゃないみたいにとても暖かかった。

「だからなるべく早めに結論を出してくれと言ったんだ」
クラピカはちょっと怒っていた。
「迷惑をかけて、ごめんなさい」
「……急かしてすまない。それと迷惑とも思っていない」
 
 結論はずっと前から出ている。早く伝えたかったけど、私の覚悟ができていなかっただけ。でも、私がもたもたしている間にクラピカに迷惑をかけてしまった。クラピカは優しいからああ言っているけど、本当の所は分からない。

 これ以上この人にとって不必要な物になるのが、今一番こわかった。

「あの、結論はここで言ってもいいの?」
「いい」
「盗聴器は?」
「しかけていない。今回は耳が良い友人に協力してもらった」
「それじゃあ、返事は『どうぞよろしくお願いします』です」
「そうか」クラピカは安心したように言った。
「ただし、私の条件を飲んでもらえるのなら」

 覚悟を決めた私は、いつもよりちょっとだけ強気だった。


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