お昼時はいつも穏やかな雰囲気を漂わせている大学内の食堂。半分以上が友人と談笑しながら食事を楽しんでいる。円堂もいつもはそうしているのだが、今日は1人だ。といっても友人と休み時間が合わないことは珍しいことではないので円堂にとっても周りにとっても可笑しいことではない。問題なのは尋常ではない顔。

「あっ円堂く………」

いつものごとく食事を共にしようと駆け寄るヒロトは円堂の顔をみた途端に絶句した。「…どうしたの、その顔」この前円堂が好きな人を打ち明けたときのような驚きを隠せない表情をしながら言った。ようやくヒロトの存在に気がついたらしく、円堂は顔を上げた。

「…よう、ヒロト」いつもより弱々しい声。顔色が悪く、目は赤く腫れている。正直見ていて非常に痛々しい。

「よう、じゃないよ円堂くん…何があったの?」

そう言いながら円堂の向かいに腰掛ける。円堂は口を開けては閉める仕草をしたあと、細々とした声で話し始めた。
あれは昨日の夜だった。



『…やめた?』
『ええ。お知り合いだったの?』

円堂はいつも通り、いつも通りにコンビニへ行った。自動ドアに近寄ると電子音が鳴りながら開く。ここまではいつもと一緒だった。そのとき、必ず聞こえる透き通った、低い声。これが電子音と混ざって聞こえてこなかったのだ。つまり、彼は店内にいないということだ。いや、もしかしたら裏の方にいるとかかもしれないけど。偶然風邪引いたかもしれないけど。
何となく、胸がざわついた。身に覚えのない感覚を覚え、咄嗟に近くに居たおばあさんの店員に話しかける。

『あっ、あの』
『はい?』
『ここに風丸一郎太さん…って働いてましたよね?』
『あーあの子ならやめたわよ』

え?とはてなが頭の中を支配した。やめた?なんで?疑問が壁から跳ね返ってくる。

『…やめた?』
『ええ。お知り合いだったの?』

その後はお酒をたくさん買い、家でやけ酒をした。そしたら飲んだ酒がそのまま目から流れているくと思うくらい、涙がどんどん溢れてきた。



「…今日休めば良かったのに」
「どうしても受けなきゃいけないのがあったから…」
「あんまり気に病まないほうがいいよ」

ヒロトは心配そうな顔で円堂の顔を覗き込んだ。「…うん」あの人の笑顔を思い浮かべながら、小さく返事をした。

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