いつも通りに部活が終わる。最近は陽が落ちるのがとても早くなったから終わるのも早くなったけど、それでも終わった頃には夜空に星が輝いている。おまけに身体は凍りそうなくらい寒い。もう冬が来てるんだなあ、と思うとなんだか時間が経つのが早いように感じる。
先輩たちと信助たちが部室に着替えに向かう中、剣城はグラウンドに歩みを進める。思わず剣城を追いかけた。

「剣城!どうしたの?」
「…自主練するだけだ」
「じゃあ俺もする!」

そう言うと剣城はジト目でこちらを見てくる。いつもなら「はあ!?ふざけんじゃねえよ」と言われると思うけど。しばらく沈黙が俺たちを包むと「…勝手にしろ」と剣城はぽつりと呟いた。
俺は頬を緩ませながら、ドリブル練習に取り掛かる。



もう30分くらい経っただろうか。そろそろ終わりにしようと剣城が提案する。周りを見渡せば、深い闇が支配していた。急いで制服に着替え、帰る準備をする。

「あれ、剣城マフラーとかしないの?」
「別に寒くねえし」

と言った途端、小さくくしゃみをした。思わずくすりと笑ったら剣城にじろりと睨まれた。でも頬が赤く染まっていて、いつものような迫力が無かった。それでまたくすくすと笑う。
「はい」と言いながら自分のマフラーを剣城に渡す。剣城は断ったが、無理矢理剣城の首に巻き付けると大人しくなり、小さく「ありがとな」と言った。思わず聞き逃しそうなくらい、小さな声だった。

「それにしても寒いよね〜」
「そうだな」
「雪でも降りそうだよね!」
「…お前はエスパーだな」
「へ?」
「雪、降ってきた」

驚きの声を上げて空を見上げると、鼻にぴたりと冷たいものが貼りついた。はらりはらりと、白い結晶が空から舞い落ちてきて、俺の顔に貼りついて行く。

「うわあ…剣城!剣城!雪!」
「テメーは小学生か」

だって嬉しいんだもん。雪を見たらはしゃぐのが子供というものだ。くるくる回ったりして思い切りはしゃぐ。

「ねえ剣城!積もったら、さ…」

雪合戦しよう、というところで言葉を失う。
雪が舞い落ちる中、佇む剣城はいつもよりも綺麗で。儚い存在に見えた。普段よりも白く見える肌が雪のように見える。思わず、目を離せないで止まってしまう。

「…積もったら、なんだよ」
「…………えっあ、ゆ、雪合戦しようかな…」
「テメーはどこまでも小学生だな」

ハハッと軽く笑いながら軽口をたたく。その笑顔もとても可愛くて、寒いのに身体の奥から熱が溢れてきて、手汗が出てくる。

「…つるぎ、」
「なんだよ」

俺、お前のこと好きみたい。

なんて、言うこともできず、「なんでもない」と誤魔化した。
雪は、俺に恋の魔法をかけてしまったようだ。

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