さて、仙ちゃんと怪しい雰囲気になっていたが今現在俺は正座中である


「仙蔵に頭が上がらないのはわかるがお前がもう少ししっかりしないといかんだろう。だいたい―」

「はい、はい。返す言葉もないですはい。」


空き教室のど真ん中で情けなく正座する俺と怒りのピークが過ぎたのか若干呆れ気味に説教する女の子、とそれを少し離れてつまらなそうに椅子に座って見ている仙蔵。
目の前の女の子を見る。この子は何度か見かけたことがあるぞ

潮江文次郎さん。生徒会にも所属している会計委員会の委員長だ。学園の生徒会は地味…というかやけに委員会の委員長の人々が派手で華やかなので正直、この人以外の生徒会メンバーをよく知らない。
生徒会長とかもたしか人の良さそうな顔をした男子だった、くらいの印象である。ごめんよ会長

それにしても…可愛い子の友達はやっぱり可愛い子なんだなぁ。
襟首のところで切り揃えられた黒髪に意志の強そうな目はそれなりに大きく、下に濃い隈がある。眉がキリリとしていて利発そうだ。いや実際に頭良いんだろうな。
体操着から見えている鎖骨が綺麗でうなじとかまで想像してしまう。変態とか言わないで!思春期だから!
それに運動をよくしているのかその…スタイルいいですね。最近の女子高生って皆こうなのかな…。
途中から無言で熱心に見つめていたことに気付いた時には潮江さんは言い淀んでいてどこか居心地悪そうだった。ヤバい、何か言わねば。


「いや、潮江さん綺麗だしスタイル良いししっかりしてるしでモテるだろうなーって。彼氏さん心配何じゃない?」

もっと何かなかったのか俺!

「はっ!?おお前、なな何を!それにかっ彼氏などいないっ!!」


そっぽをむいて自分の体を抱く潮江さん。耳が赤い。
そうだよ…
潮江さんの両手を握る。


「んなっ!!!?」

「そうだよ、女の子ってフツーこんな反応だよね!!恥じらう姿に男はグッとくるもんですよ!いきなり身体をまさぐられても押し倒されても密室に連れ込まれそうになっても!実際はなかなか動けないもんですよ!だって覚悟出来てないもん!潮江さんっ俺、感動した!!大和撫子サイコー!!!」

「…っ!!!」


そしてテンションのまま潮江さんに抱き着、


「痛゙いいだい仙ちゃんちょー痛゙い!!!」

「黙れっ貴様私の誘いにはのらないで文次郎は口説くのか!」

「口説くなんて!素敵だって言っているだけじゃん!!」


てか耳引っ張られるのちょー痛いんだな!




それから一緒に体育館まで行ったんだが(どうやらスタートはどこも体育館らしい…)、入った瞬間に後悔した。めっさ見られとる。
2組の男子の方からは「おい、名字がまた女子をひっかけてるぞ」とか聴こえる。ヤバい、またプロレス技か。てかお前ひっかけるとか言い方古いな。


「じゃあ仙ちゃん潮江さんまたね」

「おいッ!」

潮江さんに呼び止められた。
なんだろう?

「…俺のっことは文次郎でいい」

「え、いいの?」

「いいと言っている!」


顔真っ赤で可愛いなぁ照れくさいのかなー。自然と笑みが溢れた


「じゃあ俺のことも名前で!よろしくな文次郎っ」

「…っあぁ」

さっさと1組女子の輪に行ってしまう文次郎

「名前」

「何かな仙ちゃん」

「日曜私に付き合え」

「…え゙」

「私はまだお前が二年間も避け続けていたことを許してはいないぞ」

「……はい」

「詳細は追って連絡する。楽しみにしておけ」


ニヤニヤと楽しそうに笑って仙ちゃんも文次郎の後を追った。
仙ちゃんは俺の携帯の番号やメアドを知っているのだろうか……
なにそれ怖い
とりあえず2組が全体的に黒いのと3組女子の方にいる留ちゃんの背後が燃えているような気がするので何とかしてもらいたい。
助けて田中。え、無理っしょ。
脳内で助けを求めたら体育館内のどこかにいるらしい田中から返事がきた気がした。


(まぁ元気そうで何より、だよね)