大川学園はなかなかに人数が多いため身体測定も盛大だ。1・2年は午前中、3年は午後でスタンプラリー形式で行われる。身長・体重・座高の測定は体育館、視力検査は第一理科室といった感じだ。健康診断も兼ねてやるので昼中学園内を彷徨くことになる。
つまり、他クラスとの遭遇率も上がる。加えて今朝の手紙。
俺は、逃げきれるのか…?


「ね、ねぇ長次、男子と女子じゃ測定する場所が違うよね?」

「……………………。」

「すいませんごめんなさい説明不足でした。だから無言で見つめてこないで!長次に嫌われたら俺死んじゃう!」


教室内にオアシスがなかったら本当に、今なら死ねる。俺は仙ちゃんから手紙を貰ったことを話した。長次は仙ちゃんの名前を出しただけでなんか納得していた。
というかやっぱり知り合いなのか。小平太と留ちゃんといい、世間は案外狭いなー


「……基本的には同じ場所でしきりがある程度だ。しかし、他クラスなら巡回順が違うはずだから…そう簡単には会わない、と思う…」


長次の説明を聞きつつ、俺は長次ってこんなに一度に喋れたんだなーとか考えてた。…大丈夫か?と心配そうに聞かれて思考から戻ってくる。


「大丈夫!もうお互い高校生だしね!!」


俺は長次を安心させようとニッコリ笑ったんだが長次の顔は晴れなかった。
身体測定が始まり、流石に長次や小平太といるわけにはいかないのでクラスの男子に混ざる。
ハリウッドスター並の質問攻めで俺は大人気だった。まぁ俺に関してなんて小平太達との関係についてとかだけだけど。あとは小平太達についてだった。勇気出して自分で聞け!
しかし、やっぱり人気高いんだな。散々羨ましがられなじられ最終的にはヘッドロックという制裁を受けました。
なんか体育会系のノリのヤツが多くて面白い。やっとクラスに馴染んだ気がするよ田中!!


+++


「久しぶりだな名前」

「はい。お久しぶりですゴメンナサイ」


説明しよう!更衣室で体操着とジャージに着替えて体育館へ向かっていたらいきなり横から手がのびてきて空き教室にひきずりこまれたよ!軽くスプラッターホラーを思い出したよ!!
教室の床に仰向けに倒れていて、その上に馬乗りになられている。
俺の顔の両わきに手が置かれ、長い髪が散っていてそれすら俺を逃がさないための檻のように思えた。新雪のように白くてモデルのような体躯でもこの状況では怖さしか感じられない。貞○かと思った…
必死に目を合わせまいとしていたんだが、上からくる高圧的な視線にあっけなく負けた。観念して視線をあげるとそこには美麗過ぎる顔。


「仙ちゃん相変わらず綺麗だね」

「違うだろう名前?」

「……前にも増してお美しいですよね」

「あぁ、有り難う。」


艶然と笑う仙ちゃん。女王様め…!
賛辞も述べたので退いてくれると思ったのだが仙ちゃんは動こうとしない。


「仙ちゃん…?」

「なんだ」

「あの、そろそろ退いてくれない?」

「…お前はこの私が誘っているというのにナニもしないのか」

「何もしませんできません」

「このヘタレが。まぁ脱がせば気も変わるだろう」

「ちょっ…!」


仙ちゃんが嬉々として俺の体操着に手を滑りこませた瞬間、


ガラッ――


「…………。」

「…………。」

「……………。」


間。


「なっ何をしているバカタレーーーー!!!!!!」


あとから後輩に学園中に響いていたと聞いた。


(嫌いじゃないんだ…苦手なんだ…)