その日は朝から嫌な予感がしていたにも関わらず目玉焼きを作ろうと割った卵は双子だったり、叔父さんの機嫌がえらく良く抱き着かれた後お小遣いをくれたり向かいの家のおばさんからおすそわけを貰ったり、といいことが続く。なんだか気味が悪くどんなよくないことが起こるんだとビクビクしていた。
「あ!名前君おはよう!!」
「おはよう名前」
だから後ろからかけられた声にやたらビクッとしたのは仕方ないことだ
ヘタレって言わないで!
恐る恐る振り返ると、
「留ちゃん…にいさっくん!おはよう!」
俺は今日はついてる日だと確信した
善法寺 伊作。ふわふわした外見と優しい性格が人気の学園のマドンナで留ちゃんの親友。因みに俺との関係は1年の時のクラスメートだ。
その他にも見かけるたびに他校の男子や変なおっさんに絡まれてるのを手助けしている(あくまで手助け、撃退とか俺には無理)。戦略的撤退の何が悪い!
とにかくいさっくんは可愛い。天使である。
「…デレデレするな名前」
「いやー無理っしょーいさっくん今日も可愛いねぇ」
「えぇ!?そんなっもう名前君お世辞言っても何もでないよ!」
照れたように笑ういさっくんマジ天使。でもちょっと元気ない?
俺は首を傾げながら学園までの道のりを二人と歩く。
やっぱ気になるよね
「ねぇいさっくん、何か元気ない…?」
「気にするな名前、身体測定を気にしてるだけだ」
「え、」
「ちょっ留さん!!」
なんで言っちゃうの!といさっくんが顔を赤くして留ちゃんにくってかかる。二の腕らへんをポカポカ殴られているが気にした風もなく留ちゃんは俺に説明を続けた。
「去年より体重が増えてるらしい。どこに肉がついたかなんて明らかなのにな」
「留ちゃんそれ俺返答に困ります」
「酷いよ留さん自分はスレンダーだからって!!!」
その後は俺がとても参加できないお互いの体型についての貶し合いだか褒め合いだかわからない会話で、ちょっと恥ずかしかった。
二人とも俺の存在忘れないで!いやたまに同意を求められていたから忘れてないか。…男として見られてない?思い至った可能性を俺は忘れることにした。だって残酷過ぎるんだもん
靴箱について上履きに履き替えようとすると自分の上履きの上に手紙があった。
これはまさか、アレですか。
今日はどうしたホントに。最近疲れきっている俺へのプレゼントだろうか。それならば今日を思いっきり楽しもう!!神様有り難う!!
綺麗な便せんを開くと遠目で見ても短い文だった。
きっぱりさっぱりした子なんだろうか。いいよね、そーいう子。
『今日、会えるのを楽しみにしていろ 立花 仙―「いやぁぁああああ!!!!」
「どうした!名前!!」
「どうしたの!?名前くうわぁあっ」
「あ、いさっくんごめん…」
思わず投げ捨てた手紙でいさっくんが滑って転んでしまった。ピンクの水玉…
留ちゃんがいさっくんの足跡がついた手紙を拾って読む。
「相変わらず仙蔵はお前(を苛めるの)が大好きだな」
「留ちゃん余計なのも聞こえました…」
留ちゃんはただ笑っていた。
(神様は俺を休ませる気はないようです田中ぁ…)
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