梅雨独特のジメッと感にうんざりしつつ、LHRにて今度の体育祭について話されている…のを流しききつつ配られた当日のプログラムを眺める。放送部で既に進行用のプログラムを渡されていたため内容にはあまり興味はないのだが、生徒用の方には挿絵や各軍の煽り文句などが書かれていてなかなか面白い。
学園の体育祭は毎年紅、白、青の三軍にわかれ1〜3年縦割りの組分けとなる。学年関係なく1組の味方は1組であり、2組の味方は2組といった感じ。色選択は自由で毎年その軍の団長達がジャンケンで決めるらしい。今年は1組が紅軍、2組が青軍、3組が白軍となった。つまり俺や小平太達は青軍ね


「(まぁ放送部は曲流したりアナウンスしたり忙しいからかなり中立に近いかも)」

「おいおい体育祭だっつーのに気合いの欠片もねぇな名字?」


実は前の席に座っている火男の一言でクラス中の奴がこちらを睨んできた。3年2組のクラスメート達は体育会系の奴らが多くこういう行事は全力なのだ。


「いやいややる気あるよ?なんたって今年が最後だし弱小放送部の面子で進行してかなきゃいけないし」

「いや違ぇよ名字…」

「なんだよ?お前だって写真部で体育祭の記録任されてて腕がなるって言ってたじゃん」

気のせいか男連中が反応した。

「そうじゃなくて競技の方にももっと気合い入れろっつの!」

「そうだ!名前は何に出るんだ!?」

「……………。」


火男との話の途中で小平太と長次も加わってきた。うん、席近いんです。


「短距離と借り物競走と棒倒し」

「何だ、意外にちゃんと参加するんだな」

「火男…お前は棒倒し練習の時の俺を忘れたのか…?」

「あぁ!積もりに積もった恨みを晴らすかのごとく3年の男連中が組関係なくお前を殺しにかかったアレな!!もう田中と爆笑だったぜ!」

「えっいつの間に田中と仲良くなってんの…?」


あいつ最近まともにメール返してくれないのに…。知らなかった事実に結構なショックを受ける名前。気にしたら立ち直れそうにないので素早く話題を変えた。


「そっそういえば毎年借り物競走あるけどさ!あのお題って誰が考えてんのかな?ちょっと変わったのとか混じってんだよなー長次知ってる?」

「……用具委員と学園長先生」

「えっ学園長先生そこで参加してんの?」


いつも行事には積極的に参加していたがまさか体育祭にも参加しているとは。
…まぁ元気なのは良いことだ。


「なんだ名前は委員会&部活動対抗リレーには出ないのか?」


小平太がこてんと首を傾げる。
ちょっとした仕草にグッとキたり


「いやぁうちリレー出来るほど部員いないからさぁ」


幽霊部員達を引っ張ってくるのも気が引けるし。
ハハハーとかわいた笑いが出た


「むぅ…名前はごほうび欲しくないのか?」

「ご褒美?」

「学園長が特別に用意しているらしいぜ?あくまでウワサだけどな」


火男から補足説明が入る。
なんでもリレーで1位を取った委員会か部活動に学園長がご褒美を用意しているとか。ご褒美が何かはわかってないがウワサだと後期予算に色をつけてもらえるとか…文次郎が怒りそうだな。


「となると1位争いは図書委員会と用具委員会とバレー部だな…」

「えっ委員会より運動部のが有利じゃない?サッカー部とか野球部とか」

図書委員会とか不利なイメージしかない。

「名字、この学園の大きな特徴を言ってみろ」

「男子生徒の立場が弱い」

「正解!その辺の部活動ば謎の勢力゙との話し合いにより不参加だ」

「な、謎の勢力って…?」

「言葉のままだ。そうだな、ヒントをやるなら他に有力なのは茶道部だな」

「あぁ…」


俺は思わず両手で顔を覆った。
茶道部は文化部の中でも部員数の少ない放送部並みに弱小部だが、部長の仙ちゃんを筆頭にかなりの美人揃いで有名だ。彼女達とお茶会をしたいという女子生徒は多い。それと、用具委員長は留ちゃんだ。言わずもがな、留ちゃんはその…ソッチ方面の人にモテる。非公式ファンクラブがあるほどだ(仙ちゃんにもあるが)。つまり、゙謎の勢力゙というのは仙ちゃんや留ちゃんに勝ってほしい女子達だろう。皆が知っている゙謎の団体゙だ
……まさか体育祭で女子校の名残を感じるとは。


「対抗リレーは勿論、名字は学園長監修の借り物競走に出る…こりゃ面白いことになりそうだな」


ニヤニヤと明後日を向いて笑う火男
フラグを建てないもらえないか。