6月に入り、夏休みまで残り約2ヶ月となった。その分受験が迫ってきているのだが他所の高校に比べると随分まったりしている。
まぁウチ付属校だしな…
残すところ後少しとなった学園生活を思いっきり満喫しようとしているのか、夏が近いからなのか男共のテンションがやたら高い。薄着の肌、火照る身体、一夏の恋…あぁ、素晴らしい夏…!
何より、


「衣替えってこんなにテンションを左右させる行事だったんだな…」

「名前?」


目の前に立つ小平太を見る。
夏服になり、より開放的になったセーラー服はなんというか、彼女のために仕立てられたかのようによく似合っている。リボンタイを押し上げている胸や短いスカートに目がいってしまうが、ポニーテールで夏服とか可愛いにも程があるよね!


「男は好きだよなぁポニーテール」

「名前も好きか!?」

「んー俺は彼女に似合ってるなら何でも」

ツインテもボブもロングも三編みも捨てがたいです

「むーじゃあ私は似合ってるか!?」


目の前で一回転する小平太。
揺れるポニーテールごしに見える項よりも短いスカートに目がいった。男の習性である仕方ない


「似合ってるけど…小平太はまずスカート短過ぎ。見ててヒヤヒヤする」

「別に名前なら見ても怒らないぞ?」

「そうじゃなくて…はぁ、長次からも言ってやってよ」


隣で事の行く末を(あまり興味無さそうに)見守っていた長次にふる。こちらも夏服になり長い手足が露になっていてスタイルの良さが一目でわかるようになっている。夏服バンザイ
長次は一度俺をジッと見て小平太に言った。


「………小平太、…短過ぎると興奮を覚える前に心配になる、……と名前は言っている」

一部何かデフォルメされてね?

「でもコレもう切ってしまっているからどうにもならんしなー」

「え、スカートって切るものなの?」

「…………規則違反」

「細かいことは気にするな!」

「いやいや規則は細かくな「名前!!」………何でしょうか小平太さん」


俺の右腕に抱き着く小平太。この2ヶ月で彼女のペースにもう慣れてしまっていた。タックルには慣れることはないが。


「心配しなくても私は名前のものだぞ!!」

「自分を大事にして下さい」

「そして名前も私のものだ!」

「違うからね!?」

「………………。」


さりげなく俺の左腕を両手で掴んでいる長次(小平太に便乗しているのか、ストッパーも兼ねてなのか、はたまたただのノリなのかは俺には解りかねる)。
もはやこの2人の真ん中が俺の定位置になりつつあった。


+++


「はぁ〜ぁあ」


今日何度目かの溜め息をつく。この前から頭に浮かぶのは三郎からくっつかれてもしょうがないなぁという顔をしていた名前センパイばかり。
正直言って名前センパイからしたら俺って大事にしている後輩(三郎)の友達、だろう。三郎に連れられて名前センパイに会いにいって自然と俺まで名前センパイを好きなって。……………名前センパイに近づくにはもっと何か濃い関係を作らなくては。兵助だってこの前一人でブツブツと「名前先輩…弓道部に…」とか呟いていた。俺もそれくらい積極的にいかなきゃだよな!


「何一人で百面相してるんだ?ハチ」

「おわっ!名前先パイ!?なんでっ」

「校舎からハチの姿が見えたから。どうかしたの?」


自然な動作で俺の痛んでいる髪を撫でてくる先パイ。無自覚って怖ぇ…いや、俺が後輩としか見られていない証でもあるか。そう考えると凹むっつーか…って!積極的にいくんだろ俺!落ち込んでるバヤイじゃねーって!!


「おい…ハチ、本当に大丈夫か?委員会とか大変だろうけどあんまり無理するなよ?手伝いくらいなら出来るから」


俺の額に手をやり、熱はなさそうだけど…と言う先パイ。意外にも先パイの手はそんなに温かくない。
めっちゃ温いイメージがあったんだけど。
額にあった名前先パイの手をとる


「先パイ、先パイもあんま無理しないで下さい。何かあったら俺に言って下さいねお手伝いしますから!俺、名前先パイにもっと近づきたいし、役に立ちたいって思ってるんで!!」


鼻息荒くというか結構な勢いで話す俺
本当は飼育委員会に誘うはずが俺の口から出たのはこんな言葉だった。まぁでもこれも本心だしいいか、と思い少しでも先パイに俺の気持ちが伝わるように名前先パイの目を見ながらギュッと手を握る。俺の両手から先パイの手に体温が移り、段々先パイの手が温まってくる。そのことになんだかホッとした。


「え………っと、…うぁ……お、」


先パイは何か言葉にならないみたいで、不思議に思い首を傾げるとついには顔が真っ赤になった。え、なんだこの反応。


「ハチ…無自覚さんなのね…恐ろしい子…」


そう言いながら俺が握っていない方の手で自分の頬を掻く先パイ。


「名前先パイだけには言われたくないッス」

「え…、マジ…?」

「マジッス」

「……いやいや仮にそうだとしても俺が言うのとハチが言うのとじゃ全然違うでしょ。」


どこか遠い目をして話す名前先パイ
………イマイチ先パイは自分がおかれている状況を解っているようで解っていない、というより自分に自信が欠片もないと言った方がいいだろうか?


「少なくとも俺は名前先パイを慕ってますから。先パイの役に立ちたいです」

もう一度、念を押すように先パイに言う

「…有り難う、ハチがいるなら百人力だね!」


照れながらもしっかりとお礼を言い微笑む名前先パイにやっぱり積極的に頑張ってみようと心に決めた。


((率直にこられるとどう返したらいいかわからないです))