「そこに座ってー?」


屋上に連れて来られてちょうど真ん中らへんに座らされる。素直に座ると斉藤は俺の目の前に膝立ちになった。黙って行動を見守っていると斉藤は俺の耳らへんの髪を撫でるように触ってきた。


「やっぱり、綺麗な髪だ。教室から見えて触ってみたかったんだよねー」


ニコニコ笑う斉藤。


「…早速だが斉藤、いくつか質問に答えて、写真を撮らせて欲しい」

「わかった、何でも聞いて?」


あまり2人っきりで居たくないのですぐに取材を終わらせたかった。
斉藤は驚いたことに俺と同い年で長く海外で暮らしていたのでこちらの文化にもふれるために学園に入ったのだとか。親父さんがカリスマ美容師で自分もそちらの道に興味があること、親父さんから指導を受けていること。文法などが未だに少し苦手でわからない単語があるとよくメモをとっていることなど色々聞けた。斉藤は質問に答えながらもずっと俺の髪を触っていた。意図せずたまに耳や首もとに斉藤の指が触れてビクッとなる。そのたびにクスリ、と笑われていた気がする。
ちょっと苛つく


「じゃあ最後に写真を「ねぇ名前君?これは本当に学園新聞になるのかな?」………。」


斉藤の両手が俺の頬を包んでお互いの鼻がつきそうな距離で見つめてくる。近くで見るとホント、猫みたいな奴だ


「新聞にはなる。だが俺は新聞部じゃないからな、詳しくは知らない。」

「え、名前君違うの?」

「俺は放送部だ」

「じゃあ余計名前君が俺に取材するのは不自然だよね」

「……斉藤に興味があったからな、火男に頼んだんだ」

「えー嬉しいなぁ、それ」


本当だったらだけどね
斉藤が動き唇が触れあった。顔を掴まれていたので拒めなかった。なんて言うか最近の子は…肉食系が流行ってるの?余計男が草食化しないか?いや、男は皆狼なんだが
現実逃避から思考が迷子である


「少しは俺に興味持ってくれた?」

「ヘタレで有名なんだ。避けたくなった」

「えー?じゃあ俺から会いに行かなきゃねー」


なんだか凄い苦手だこの人
向かい合う形になって座る。短いスカートが気になったので仕方なく斉藤の膝に学ランをかけた。彼女はきょとんとした後、俺ににっこり笑って「優しいね名前君、ありがとー」と言った。


「いいから写真撮らせて下さい」

「えー撮ったら名前君行っちゃうでしょ?」

「当たり前」

「んーじゃあ連絡先教えてよ。後、俺のことはタカ丸って呼んで!そしたら写真撮っていいよ」


どぉ?と小首を傾げる斉藤。マジ勘弁して下さい
しかし、俺には斉藤に投票した男共の願いを叶える義務がある。重たい溜め息を一つして、渋々自分の携帯を取り出した。
あぁ、やっぱり苦手だこの人


(撮ってきたぞ火男)
(お疲れ名字!!いやー助かったぜ…っておわぁ)
(俺暫く斉藤に会いたくない)
((思いっきりこれお前のこと誘ってんじゃん…))