◇一年生 第一位 綾部 喜八郎◇


一通り話して取材許可をもらった。
しかし、


「……………。」

「………えーっと、」


学ランの裾を掴まれて至近距離から見つめられる。
見つめるといっても甘さは一切なく、無表情でガン見してくるのだが。
ふわふわした髪を高い位置で結い上げてくっきりはっきりした顔は紛れもない美少女である。セーラー服も清楚に着こなしているし、ミステリアスな不思議ちゃんって感じだ。


「ちょっとごめんな」

「……?はぁ」


とりあえず先ほどから髪や頬に泥とか砂がついているのが気になっていてそれらをはらう。自然と髪や頬にも触れることになったのだが彼女は特に嫌がったりしなかった。めっさ見られたけど。そのまま頭を撫でる


「………名前先輩」

「あ、悪いな、つい。」

「もっと撫でて下さい」

「? おう」


いつも三郎や勘右衛門にするようにではなく優しく撫でる。綾部は気持ち良さそうに目を閉じている。
……猫みてぇ


「綾部、質問に答えて後、写真を一枚撮らせて欲しい」

「どーぞー」


その後明らかにテキトーな受け答えをされ、綾部だけでいいのに一緒に写真を撮らされた。無表情でVサインってなんか面白いな。


「名前先輩また会いに来て下さい」

「綾部茶道部だろ?今度仙ちゃんに用が、」

「私に、会いに来て下さい」


火男にどつかれたのは言うまでもない


+++


◇一年生 第二位 平 滝夜叉丸・田村 三木ヱ門◇


一年の二位は同票だったらしい。
先程同様、平と田村に取材をお願いする


「ということでバレー部期待の新人の平と1年にして会計委員会の主力として働いている田村の2人に幾つかの質問に答えてもらって後、写真も撮らせて欲しいんだけど」

「えぇ!構いませんとも先輩のお役に立てるのなら才色兼備の化身と名高いこの私、平滝夜叉丸が協力しますよ!何でも聞いて下さい。ただ写真はいいですけど美しく!撮って下さいね!!」

「なぁにが美しくだこの自惚れ屋め!大川学園のアイドルのこの僕をさし置いて!先輩、僕も力の限り尽力しますから!!」

「あ、ありがと…」


いがみ合う2人を見て思う。
あぁ、ここまで残念な美少女達も珍しい。
平は本当に華やかな美少女だ。綺麗な黒髪をハーフアップにしていて後れ毛をかきあげる姿なんて凄く様になっている。スタイルも良いし、何より自信に満ち溢れたその姿こそ彼女の魅力だろう。
田村は平に比べると素朴な感じの美少女で、しかし見劣りは全くしていない。金茶の髪はサラサラでポニーテールがキリリとして見せている。こちらはスレンダーでシュッとしていて……いやホント今年の1年スゲーな。いやでもこの2人話長そうだな…早く終わらせたいんだけど。


「平は中等部もバレー部だったんだよな?小平太から聞いてるぞ頑張り屋で気が利くいい子だって。田村は会計委員会大変だろうけど睡眠はしっかりとるんだぞ。せっかく凄く可愛いのに目が赤いんじゃな、勿体無い」


喧嘩もよくないぞ、と付け加えて褒めてみる。喧嘩の気が削がれたらいいのだが。


「「……………………。」」


それからの2人はさっきまでの様子が嘘だったかのように大人しかったので取材は滞りなく済んだ。写真はまた一緒に撮ろうとせがまれたので携帯のカメラ機能で撮ったのだが(俺に使うフィルムはないらしい…)喜んでもらえたようだ。密着度にお兄さんはドキドキだったよ…
見学にも後日来て下さい!と誘われて必ず行くと約束し、別れた。
火男には呪いの言葉を吐かれた。


「さて、次行くぞ」

「は?1年は終わりだろ?二位が2人なんだから」

「より多く可愛い女子を紹介するために4位まで取材します。それに今回の1年の4位、注目株なんだよ」

「へぇ、どんな子?」

「帰国子女だ。頑張ってくれよ名字」

「え、日本語話せるんだろ?」

「そこじゃねぇ。ランキング上位者の中で隠し撮りが難しい奴等がいるって言ったろ?」

「まさか…」

「そう、その一人だ」


因みに残りはお前の知り合いだぞ、と付け足される。
あぁ、うん。そっちはなんとなく予想ついてる。
しかし、それならより気を引きしめなくちゃな


◇一年生 第四位 斉藤 タカ丸◇


1年3組へ行ってみると一際目立つ金髪ギャルがいた。
他の女子に比べて飛び抜けて背が高い。もしかしたら小平太や長次くらいあるかも。制服もだいぶ着崩しているし遠目から見てもなんか仕草がギャルだ。マジか
大きな猫のような目と一瞬目が合った気がして反射的にそらす。


「火男、俺無理だ」

「は?なんで」

「お前…一般男子の俺がギャルと話せると思ってんの?」

「おまけにヘタレだな」

「わかってるなら「あれ〜?一年生じゃないよね。何かご用?」


振り返るとギャルがいた。
思わず後退る俺を火男が後ろからどつく。
端から見たらシュールな図だ。


「えっと俺、3年の名字名前て言います。斉藤タカ丸さんに学園新聞の取材を申し込みに「いいよーここじゃなんだし移動しよっかー」え…」


ニコニコ笑って俺の手を掴み歩き出す斉藤。
しかし、一回振り返ると火男の方を見る。


「そっちの人も?」

「あ、あぁ写真を撮らせて欲しくて…」

「名前君が撮ってくれない?そしたら写真OKだよー」


ニッコリ笑っているが有無を言わせない何かがあった。てかタメ口だしいきなり名前呼びだしギャル怖い。困って火男を見ると、彼は俺の肩を掴み斉藤に聞こえない大きさで「頑張れ!」と言ってカメラも渡してきた。
えっ待ってなんかよくわかんないけどこの人と2人にしないで!!


「じゃあ行こっかー」


再び俺の手をひいて歩き出す斉藤
俺はどこに行っているのだろうか助けて下さい田中


(どうしよう女の子と手を繋いでいるのに全く嬉しくない)