綺麗なままで



※葉月に〜より前の話


「兵助は綺麗だなぁ」


授業の終わったい組の教室で名前と二人、自習をしていると脈絡もなく名前がそう言ってきた。ふと名前の手もとの本を見ると一頁も進んでいない。
ずっと俺を眺めていたらしい。


「名前、男が綺麗と言われても嬉しくないのだ。しかも男に」

「ははははッ!違いねぇ!!」


快活に名前は笑う。ここ最近ではあまり見なかった笑顔に俺もつられて薄く笑う。先日の合戦場での実習で多くの仲間を失って以来、名前は暗い顔をしていた。俺も多くの友を失ったことにかわりないが、正直いなくなってしまったのが勘ちゃんや名前達でなくて良かったと思う。
不謹慎だがそれが本音だ。


「…兵助だけは綺麗なままな気がするんだ。血を浴びても、何人手にかけようとも。同じことをしているはずなのに何故だろうな」


豆腐のおかげか?なんて名前は茶化してくる。


「俺は全然綺麗じゃないのだ。」

「そうか?俺からしたらスゲー綺麗なんだけどな……お、勘右衛門!!」


教室の窓から少々身を乗り出して演習場にいるのであろう勘ちゃんに手をふる名前。それだけで心臓らへんがずっしりと重くなったように感じる。
ほら、俺は全然綺麗じゃない


「兵助!勘右衛門が三郎を探しているそうだ。加勢にいこう」


そう言って笑顔で俺の手をひく名前が俺だけを見てくれたら………そんなことを考えて即座に頭をふる。
自分勝手な想いだ名前の気持ちを無視している。
俺は少し前を歩く名前の手を強く握り返すことでさっきまでの想いをとどめた。


***
男主は兵助の見た目は勿論、ブレない強さみたいなものを綺麗と称してる。でも実際はお前の一挙一動でブレブレなんだぜ、兵助。
ヤンデレ予備軍
五年い組はそんなイメージ。



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