葉月に、会いにいく



※死ネタ 軽い流血表現あり





五年生にもなるとそれなりに難易度の高い実習が増えてくる。今までも何度か危機をむかえてきたが、6人一緒になんとか潜りぬけてきた。しかし、今回は本当に駄目かもしれない。
腹部を見るとクナイが深く刺さったままだ。刺さったままの状態でこの出血量だもう長くはもたないだろう。
俺は死ぬのか


「…兵助!やっぱり学園へ運んで新野先生に…!!」

「…動かすのは逆に危険だ。それに…もう八左ヱ門だってわかっているだろう」

「お前…!」


おいおい兵助こんな時まで冷静だなぁ
ちょっとはとり乱してくれてもいいんじゃないの?
そう思って兵助を見やると立ったまま静かに泣いていた。長いまつげが濡れていて目から顎までを止めどなく涙がつたっている。
こんな時だが泣き方まで綺麗な奴だと思った。
竹谷はそっぽをむいて俯いているため表情が見えない。手を強く握ってこぶしを震わせている。爪とかくいこまなきゃいいけど。


「おい名前、冗談キツイぞ。実技だけが取り柄のは組なんだろ?だから冗談に決まっている。この鉢屋三郎を騙そうなんて十年早いぞ……名前っ、死ぬなよ…お願いだからっ…!」

「名前…!」


竹谷の方を見ていたら涙で顔をぐちゃぐちゃにしている三郎が視界に飛び込んできた。雷蔵本人より顔をぐちゃぐちゃにして泣いている。雷蔵は眉間に皺を寄せながら周りの気配を探っているようだ。
こういう時、双忍でも性格出るよなぁ

正直もう意識がヤバイ。目の前で大切な仲間が泣いているのにどうも出来ない所かどんどんそれが遠くに感じてくる。俺はまだ何も言えていない。
後一人、いるはずだ


「名前」


待ち望んでいた声がすぐそばから聞こえる。そちらを見ればいつもに比べると随分と下手くそな笑顔の勘右衛門がいた。
思わず少し笑うと何か溢れた。
ヤベッ涎じゃないよな


「…――――――。」


最後に頑張ってそれだけ言うと急激にまぶたが重くなる。
下手くそな笑顔のまま勘右衛門はしっかりと頷いてくれた。


***
五年の反応は私の勝手な妄想です
三郎さんは死に対して達観しててもいいけど、人一倍臆病でもいい
雷蔵さんが喋らないのは私の力不足ですごねんなさい



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