幸せなBADENDを貴方に



※転生現パロ









『俺と名前はず〜っと一緒だからな!例え生まれ変わったとしても俺はお前を覚えてる!んで、また絶対好きだって伝えるぞ!!あ、ちょっ名前!信じてないだろ!!ちゃんと聞けってー!!』









「おほー!兵助に女の子の幼馴染みかぁ!!初めまして!俺、竹谷八左ヱ門。これからよろしくなっ!!!」


なんだそれなんだ、これ

ふざけんな


+++


「名前〜そろそろフツーにはっちゃんと接してあげたら?はっちゃん、俺は嫌われてるって勘違いしてるよ?」

「は?何言ってるの勘ちゃん。嫌いとかの前に眼中にないしあんな焼きそばフツメン」

「もう!名前はいっつもそんな言い方するんだから!ちょっとは素直になってもいいんじゃないの?」

「雷蔵、私めっちゃ素直だし。私ほど素直な子なかなかいないし。」

「いい加減割りきったらどうなんだ?」

「……………三郎に言われなくても、わかってるし」



時代は多分室町ごろ。
勘ちゃん達は忍者の卵の忍たまで、私はくの一の卵のくのたまだったりした。嘘みたいだけど確かにある記憶、思い出たち。
その全てを仲間だったはずの竹谷八左ヱ門はすっかり全部忘れてしまったらしい。
…………………勿論その時の感情も恋仲だったはずの女の子も、自分が言ったはずの言葉さえ。


『好きだぜ名前!!お前が恥ずかしくて言えない分も俺がちゃーんとお前に…って叩くなよ!?…なんだよ、照れてんだろ?可愛いなぁ名前は!!』


ふざけんなふざけんな


そのお陰で奴は現在、前世の時とは比べるのも失礼なくらい可愛らしく素敵な彼女がいる。素直で優しい…とにかく正反対の女の子。
多分、あれが正しいのだ。
前世の記憶なんて持ってしまったばっかりに私達はそれに縛られて、


「納得出来ないのだ」

「……兵助」

「なんで皆はっちゃんに言わないのだ。皆が、名前が言わないなら俺一人でも」

「やめなよ兵助。前世のことは、はっちゃんが忘れてるなら蒸し返さないでおこうって皆で散々話し合って決めたじゃん」

「うん……結局、ハチが最後まで生き残って…きっと忘れてしまいたいほど辛い思いをしたんだろう、て」

「それと名前のことは別なのだ!」

「ハチは"今"を生きてるんだ。…名前も納得している。私達が口出すことじゃないぞ兵助」

「……………名前は本当にこれでいいのか?」



『―――名前っ!!!おお俺さっ前からおぉ、おお前のこと!―』



「……ぐだぐだ言ってたってしょうがないよ。それに、言ったでしょ?あんなフツメン眼中にないってさ」


彼はもうとっくに私が好きだった"竹谷八左ヱ門"ではなくなっているのだから





幼馴染みというのは元来口煩いらしく、ハチと上手くいってない時とかよく気にしてくれた。竹谷を見つけた時は一番に私に教えてくれて自分の白い頬を紅潮させて凄く喜んでくれた。その後は「こんなのってないのだ…」とか言いながら私も泣いてないのにわんわん泣いてた。兵助はハチの親友だった

未だぶーぶー文句たれる兵助を豆腐で釣り、黙らせてから先に帰らせる。早く行け、私は残って明日の授業の予習をしてから帰りたいんだ。


「よぉ兵助!…と、名前さんも一緒か……」

私に気付いて気まずい顔をする竹谷
兵助は大きく舌打ちをした。おい、ガラ悪いぞ優等生

「じゃあ名前、商店街のお豆腐屋さんの絹豆腐と木綿豆腐、約束なのだ。はっちゃんまた明日、またね」

「お、おぉ……」


おい待て幼馴染み、こいつも回収していけ


「あー、えっと…」


いい加減割りきれという三郎の言葉を思い出す。そうだ、いいじゃんこんな奴。


「へ、兵助は相変わらずだな!いつから豆腐豆腐言ってんだ?」

「……そうだね保育園の時にはもうおやつが豆腐じゃないとかで泣いてたよ。普段無表情なのにびーびー泣いてたから、よく覚えてる。」

「え………」


私が会話を繋げたのに驚いたらしい。それもそうか、いつも適当にぶった斬ってたもんなー


「そ、そっか!、それは筋金入りだなー流石兵助!と言うべきか」

「もう一種の中毒だよ。あのまま豆腐と添い遂げたりしてね」

「…ちょっと想像出来る辺り怖いな……」


私と竹谷の間に小さい笑いが零れた


「………何だろうな」

竹谷が目を細めて笑う

「名前さんと一緒にいると、なんか懐かしい」


懐かしい懐かしい なつかしい…


「………………そっか」


それって凄く過去形な言葉じゃんね


「あのさ……ぁ、」


―竹谷の携帯が鳴った。

多分、彼女さんだろう。竹谷は携帯が入ってるんだろうズボンのポケットと私を交互に見てなんか困った顔をしている。


「いいよ。私に気にせず、出なよ。電話でしょ?」

「いや、でも………」


私は帰り支度を始めた。今日はもう家に帰ってご飯食べてお風呂に入って早々に寝てしまおう。
自分の携帯を見ると、兵助からメールが着ていた。目頭が一気にぐわっと熱くなる。前言撤回、予定変更。
通学鞄を持つ。
竹谷の携帯は鳴りっぱなしだ。


「いや、本当に……もういいからさ。
…………バイバイ、ハチ。」

「え………」


携帯を弄りながら教室を出る。
メールは一言「大丈夫だったか?」とあった。電話帳を開いて兵助に電話をかける。歩く廊下は私の歩く音だけで静まりかえっていた。
兵助に会ったらやっと、泣ける気がする。






















「―――もしもし、」


名前さんの出ていった教室のドアを見ながら鳴りっぱなしだった携帯に出る。耳に自分の彼女の心配げな声が響いた。長いこと出なかったからだろう。
それより、何故だろうか。涙腺が決壊したかのように涙が止まらない。

俺の中で確かに何かが壊れて無くなる感覚があった。



***
くの一ってプライド高そうだし、元々の性格もあって最後まで素直になれずに諦めて割りきる。主人公のバイバイの言葉で竹谷の中に残っていた記憶の欠片のような物が壊れて無くなってしまいます。それに竹谷は無意識に号泣
因みに兵助とはくっつかないと思う。
幸せな、というのはまぁそれでも可愛い彼女はいるんだから幸せでしょ?ていう皮肉と前世の記憶に未練が残っていた主人公が決別出来たということで

竹谷は凄く…悲恋が似合うと思う
あ、でもこれ悲恋か?




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