長かった仕事を終え、帰路に着こうと駅のホームへと向った。
ふと、彼氏であるブン太の顔が脳裏を過ぎった。
昨日会ったばかりだし、今日は会う約束をしているわけじゃない。
だけど…なぜかはよくわからなかったけど、会いたくなった。
私は踵を返し、方面の違う電車に乗り込んだ。

…改札を抜けたところで、私は立ち止まった。

「え…ブン太?」
「んあ?って、ルイじゃねぇかよ、ここで何してるんだよい?家逆方向じゃ…」

スーツに似合わない赤髪にいつまで経ってもやめない風船ガム。
いつもと変わらぬ出で立ちのブン太は、自分こそ家と反対方向の改札へと足を進めていた。
なんでこんなところで鉢合わせるのだろうか。

「ブン太こそ、こんなところで何してるの?ブン太も家逆方向じゃん」
「俺は、なんとなくお前に会いたくなったから、お前迎えに行こうと思ったんだよい。ルイは?」
「私も、ブン太に会いたくて…」
「俺に?」
「うん」
「………」
「………ふっ、」


お互い目を見開いて数秒、どちらからともなく笑い出した。
何これシンクロじゃん、と嬉しそうに笑うブン太に私も嬉しくなって笑う。
私たちを通り過ぎて行く人は、みな不審そうに私たちを見るけれど、そんなの気にしない。
お互いがお互いを想って偶然出会うとか、もうありえないほどの奇跡。
ひとしきり笑って、私は差し出されたブン太の手に自分のそれを絡めた。

「じゃ、俺ん家行くか!」
「私ご飯作るね」
「おっ!久々にルイのメシ食えるのか!」
「ブン太が作った方がおいしいけど」
「まあ俺は天才だからな」
「ばーか」

…あぁ、私、ブン太が好きだなぁ。






想う
(想い、想われる)




2012.12.16






人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -