「あ、トキヤ…」

何気なくテレビを眺めていたら、主演するドラマについてインタビューを受けているトキヤが映し出された。
それは、今隣で同じようにテレビを見ていた親友の友千香も気付いたようで、久しぶりに見た級友が懐かしいともらしていた。
だがそのすぐあと、ハッとしたようにあたしを見た。

「あんた、大丈夫なの?」
「え?大丈夫って、何が?」

あたしはわざと素知らぬフリをして首を傾げた。
友千香はそれでも心配そうに眉をひそめた。

「もう何週間も会ってないんでしょ?」
「1日に1度はメールしてるよ」
「会ってはいないんでしょう?」
「…会えなくても、トキヤの夢が叶うならいいの」

嘘じゃない。
あの学校にいるときから、トキヤはこの世界を目指してきた。
一ノ瀬トキヤという飾らない自分で歌を歌うために、必死で努力してきたのを、あたしは知っている。
今やっとそのスタートラインに立てたんだ、あたしの独り善がりな我儘で負担をかけたくない。
トキヤの負担になりたくない。
忙しいトキヤを支えてあげたいけど、トキヤがそれを望まないならあたしはそれに従うの。だって、

「トキヤの夢は、あたしの夢でもあるから」
「あんた…」

あたしはただ、トキヤの成功を願うだけ。
それしか出来ないけれど、その想いだけは誰にも負けない。
トキヤを大切に想うからこそ、我儘は言わない、言っちゃいけない。
会えなくても、その体温に触れられなくてもいいの。
トキヤがあたしを大切に想ってくれているだけで、いいの…。

「……なんてね」
「え?」
「あたしは…そんな聖人じゃないよ」






願う
(心の底で会いたいと"願う")
(ただ、それだけ)



2012.12.15





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