バンッという大きな音ともに開かれた扉から、明るい光が暗い此処へ入り込む。
瞼を押し上げてそちらを見遣れば、逆光で顔は見えないけれど2つの人影があるのがわかった。
ズカズカと無遠慮にこちらへと足を進めるシルエットは、私の横たわる鉄格子の前でしゃがみ込んだ。
「お嬢さん、生きてるか?」
身体を起こす気力も体力もなかったから、私は横になったままゆるゆると頷いた。
「今出すからな」
刹那、目の前にあったビクともしない鉄格子が盛大な音をたてて崩れ落ち、ただの鉄屑へと成り下がった。
驚きに目を見開いていれば、もう一人の影が動き、私の手足につけられていた枷を外してくれた。
久しぶりに自由になった手足に、ありがとうと小さく呟いた。
「気にするな、それよりお嬢さん、随分やつれてるようだが大丈夫か?」
「…平気、です」
「聞いといてなんだが、あまり大丈夫には見えないな」
目の前で依然として私を見下ろす男は、暗闇にも映える赤い髪と左目の傷痕でなんとなく海賊なんだろうと考えた。
この船も海賊の船だ。
アイツらは、この人たちに襲われたのかな。…全員、死んでたらいいのに。
「瀕死のお嬢さんをこのまま見過ごすほど落ちぶれてるつもりはないからな、お嬢さんさえよければ俺の船へ歓迎するが…どうする?」
不意に聞えた言葉に、私は耳を疑った。
今、どうするって聞いたの?
それは、私の望みを聞いたってこと?
私が、決めてもいいの?
私が驚いて男を見上げていれば、どうした?と何でもないように聞いてくる。
その表情があまりにも優しかったから、到底海賊には見えないなんてどうでもいいことが頭を過ぎった。
小さく跳ねた心臓は、どうしてだろうか。
少しの思案ののち、私は男を見てぽつりと漏らした。
「……望んでも、いい?」
「俺が出来ることであれば叶えてやるさ」
…見上げた先にあったのは、驚きと優しげな微笑みだった。
望む
(私を攫って、)
2012.12.14