(…あ、また一緒に帰ってる)


本日最後のチャイムが鳴り、帰る支度をしていたところで、自分が今週の掃除当番に当たっていることを思い出した。
面倒くさかったが、私がサボれば同じ当番の子に迷惑がかかるのは明白だったから、用具の入っているロッカーから箒を取り出した。
教室の机を下げて窓を開けたときだった。
校門までの道のりを、仲良く並んで歩いていく2つの背中を見つけた。
それは私の大好きな人で、勝手に彼を視界に入れるようになっていた自分を心底恨んだ。
何で、今なの。
二人を食い入るように見つめ、その場から動けなくなった私の隣に、誰かが立った気配がした。
やっとのことで首を動かしそちらを見遣ると、そこにいたのはやっぱり予想通りの人物だった。


「極寺…」


小さくぽつりと呟けば、その声に反応したようにちらりと私を見下ろし、また視線を前に戻した。


「お前バカだろ」
「………」


極寺が何を言っているのかなんてよくわかっている。
何度も言われて、その度に私の勝手だって反論してきた。
だけど、本当はちゃんとわかっているんだ。
私の想いが通じることはなくて、彼が私を見てくれることはなくて、選択肢なんて一つしかないことを。
本当は、わかっているんだ。


「諦めろよ」


彼と彼女の手が触れ合ったのと、極寺がそう言ったのは同時だった。
その声と光景に、今までのことなんて全てどうでもよくなった気がして、気付いたら私は極寺の胸に縋っていた。


「じゃあ、諦めさせてよ……」


何も言わずに、だが突き放すことはしない。
そんな極寺に何故か涙が一つ頬を伝った。




諦める
(君の気持ちもわかってる)




2012.12.12







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