「桜井くん、今、部活終わったの?」
「あ、はい!終わりました!すいません!」
「謝らなくても…お疲れ様」
「先輩も、お疲れ様です」
「帰りは…待ち合わせてるの?」
「そ、そうです!すいません!」
「…そう」

バスケ部の桜井良くんは、すごく弱気で常に低姿勢。
頼まれたら絶対に嫌と言えないタイプだけど、その分とても優しくて素直な子。
私の質問に顔を赤らめたのは、そんな桜井くんの付き合いだしたばかりの彼女のことを聞いたから。
一緒に帰るための待ち合わせなんて、誰もがやるようなことにすら赤くなる桜井くんは、初々しくてすごく可愛い。

「ね…桜井くん」
「はい、なんで、っ…!」

私の声に前を歩いていた桜井くんが振り返った瞬間、彼の唇に自分のものを重ねた。
軽く触れるだけのキスをすれば、見上げた彼の顔は驚愕に歪んでいて、今にも泣きそうだった。
微量ながらも罪悪感を感じるが、それでも自分の欲望の方が勝(まさ)っていた。

「え…あ、あああのっ!」
「あーあ…キス、しちゃったね」
「っ!す、すいません!」

桜井くんが悪いわけなんかないのに、それでも謝る彼はやはりそれが口癖のようになっているのだろう。

「…私、桜井くんのこと好きだよ」
「え…?」
「私、桜井くんの彼女になりたいな」
「で、でも!あの!」
「考えといてくれると嬉しいな。じゃあ、また」

可愛らしく首を傾げ、小さく手を振ってから彼に背を向ける。
未だ混乱している桜井くんの小さな声が聞こえてくる。

本当は、ああゆう控え目な子は好きじゃない。
桜井くんは可愛いと思うけど、私が好きなのは可愛いよりカッコいいの方。
それでも桜井くんが欲しいと思うのは、



奪う
(人のものって、)
(よく見えるでしょ?)







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