「え…嘘だよ、ね…?」
「嘘なんか言ってもめんどくさいだけっしょ。マジっスよ」
「涼太…」

目の前に居るのは恋人の涼太。
彼の腕に自分の腕を絡ませ、赤い唇を勝ち誇ったように歪ませる見たこともない女。
そこは私の場所なんじゃないの?
同棲していた自宅の玄関を開ければ、自分の眼を疑うようなこの光景が広がっていて。
問い詰めればそれに答えは返ってこなかった代わりに、「もう飽きたっス」と一言。
それが何を意味するかなんて分かっていた。
だから嘘でしょ?って聞いたのに、涼太は残酷。

「荷物纏めて、出てってね」

惚れさせるだけ惚れさせて、飽きたら捨てるってこと?

出かける直前だったのか、さっさと出て行った二人を追うことなんか出来ず、私はただその場に立ち尽くす。
こんな理不尽な別れを突きつけられたというのに、脳内はいやに冷静で。
きっとそれは、どこかでこれが遊びでしかないって分かってたから。
都合良く映されてたのは錯覚で、もうここにはいられない。
涼太のこと、本気で信じてた。
疑うなんて嫌で、その腕は私の為に用意されたものなんだって思ってた。
けど、きっと初めから全部嘘だった。
私は涼太の心になんかこれっぽっちも近付けなかったし、寄り添うことなんかできなかった。
私の代わりはいくらでもいるんだって、中身なんかどうでもよくてただ新しいモノが欲しかっただけなんだって、本当はきっとわかってたのに。
どうして戻れなくなってたんだろう。
いつの間にか、こんなに本気になってたんだ。
頬を伝う涙がぽたり、と玄関のコンクリートに染みをつくる。
次から次へと落ちていって、止める方法なんかわからない。
どんなに後悔したって、どんなに願ったって、もう元には戻らないんだもの。





弄ぶ
(“愛してる”)
(そう伝えたのは)
(飼い慣らすためのエサでした)




*ボカロ曲『繰り返し一粒』より





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