「はぁ…こんなとこで寝てんなよ……」

玄関を入ってすぐのところで、膝を抱えて小さく寝息をもらしている彼女。
俺はその姿に安堵と呆れの混じった嘆息をもらす。
靴を脱いでその軽すぎる身体を掬い上げ、ルイを部屋のベッドへそっと寝かせた。


『へ、すけぇ……っ…』

嗚咽混じりのか細い声で電話をかけてきたのは、今から30分程前のこと。
夜中の2時を過ぎていたのだが、俺はルイのその声に慌てて家を飛び出し、程近い場所にある彼女の家に向かった。
一人暮らしをしているルイの部屋の玄関を開けて、そして冒頭にいたる。

寝かせたベッドの脇に腰をおろし、赤くなった目元をそっと撫でた。
すると、その感触に気付いたのかルイは薄く目を開いた。

「ん…平、助…?」
「ルイ、朝までここにいてやるから、寝ろよ」
「ホントに、来てくれたんだ…」

ありがとうと弱弱しく呟いたあと、もぞもぞと布団の中から自分の手を出し、俺の指と絡めて小さく微笑み、またすぐに瞼をおろした。
その様子を見て安堵する。
何があったかなんてわかんねぇけど、こうやって隣にいて、手を繋いでやることでコイツが安心して眠れるのなら、ずっと傍にいよう。
俺はルイが眠る横に自身の体も横たえた。
…ルイが目を覚ましたとき、隣にいられるように。

「…ここにいてやるからな」






囁く
(おやすみ、よい夢を)




2012.12.21





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