「は……え?」
「何呆けてんだよ、キスしろっつったんだよ」

私今、すごいアホ面だと思う。

至近距離にある一護はむすっとしたまま拗ねたような顔をしている。
そんな表情をさせているのは言わずもがな私なのだが、そんなことを言われても困る。
元々恥ずかしがり屋な私に、自分からキ、キスをしろだなんて…そんなの無理にも程がある。
私は真っ赤な顔のままふるふる首を振った。

「いいからしろよ」
「で、でも…ここ教室で…」
「誰もいねぇよ」

そう言って私の腕を掴んだままの一護に逃げ場が見つからない。
どうしようもなくなって、脳内はパニックになり、目には涙が浮かんでくる。

「俺のこと好きなんだろ?」

恥ずかしくて死にそうだけど、自分からキスするなんて出来ないけど、そんなこと言われたら逃げられない。

「〜〜〜〜〜〜っ!」

不敵に微笑みながら私を見るから、私は意を決して一護の頬に唇を寄せた。
触れるか触れないかの口付けを頬に残し、一護を見やれば驚いたように目を見開いていた。
私は一気に恥ずかしさに襲われ、一護の手が弛んだすきに教室を飛び出した。

「あ、こら逃げんな!」
「無理恥ずかしい!」
「つーか何で口じゃねぇんだよ!」
「もうホントに無理死んじゃうもん!」

私は顔を真っ赤にして涙目のまま、追いかけてくる一護から逃げた。
窓から差し込む夕暮れの赤が、やけにあざやかに見えた。

きっと、腕をとられて抱き締められるまであと数秒。





逃げる
(精一杯の照れ隠し)


2012.12.20





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