「朝は羊が起こしてくれるから、ゆっくり休んで」
「何から何まですまないな、ありがとう」
「気にしないで…じゃあ、おやすみなさい名前ちゃん」
「おやすみ、ツクモ」

しばらく話をして、ツクモは私の部屋をあとにした。
ぱたんと閉じられた戸を眺め、与えられた寝台に横になった。
窓の外は、いつの間にそんな時間が過ぎたのだろうか、もう真っ暗だ。
瞼を下ろし、集中して霊圧を探るが、見知った者誰一人のものも感じ取ることができない。
本当に、異なる世界で私は一人きりになってしまったのだと痛感した。
…更木隊長はどうしているだろうか。
あの方のことだ、私が消えたところで大して気にも留めないだろう。
草鹿副隊長に言われて初めて気付く、そんな感じなんじゃないか?
あぁ、そんな光景がありありと瞼の裏に浮かんでくる。
だけど、一角や弓親はきっと心配する。
心配して、消えた私に怒りながら、色んな人に聞いて私の行方を捜すんだろう。
自惚れのようだが、2人と長く過ごしてきたんだから人となりはわかっているつもりだ。
それに、何よりもあの膨大な量の書類を裁く人間がいなくなってしまったことが、一番困るんだろうな。
うちの隊はには、大人しく机に座って文字を読むことのできる連中はいないからな。
隊員達も気にかけてくれているのだろうか。
乱菊は、日番谷隊長に迷惑をかけてないといいんだが…まぁ無理だろう。
会うことはできなかったが、一護は元気にしているだろうか。
道中で連絡を入れてしまったから、きっと奴も、中々現れない私のことを探しているんじゃないだろうか。
…あぁ、私はこんなに女々しい人間だっただろうか。
私は十一番隊第四席、苗字名前。
異世界にたった一人、たかがそんなことで弱るような軟弱者は、あの荒くれ者の中には居ない。
伝令神機が使えない、穿界門が開かない、誰の霊圧も感じない。

「…それが、なんだというのだ」

見開いた瞳に映るのは、月明かりで淡く照らされた真っ白な天井。
どのようにして、この世界へやって来たのかがわからないから、戻る方法も見当がつかない。
しかし、方法がないからといって、諦めるつもりなど毛頭ない。
ここには私の存在を認めてくれるものなど何もないのだ。
つまり、この世界に私の居場所などない。
何があろうと、必ずあの世界に戻ってみせる。
必ず生きて、私の居場所へと帰ってみせる。

「大丈夫。私は、強い」

自分に言い聞かせるように呟き、布団を頭まですっぽりと被り、目を閉じた。
願わくば、全てが悪い夢でありますよう…。





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