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療師の元を後にして向ったのは、とある個室。
寝台や机と椅子、棚などの必要最低限の生活必需品がある部屋だった。
その部屋にあった扉を開ければ洗面台があり、その先にあったのは與儀曰く風呂。
「…與儀、これはどうやって使うんだ?」
「えぇ!?名前ちゃんシャワー知らないの!?」
「しゃわー?」
ここはどちらかというと、尸魂界よりも遥かに現世に近い環境にあると言える。
だから、風呂に連れてきてもらえたのはありがたいが、まったくもって機器の使い方がわからない。
與儀に尋ねてわからないことを一つ一つ教えてもらう。
「で、こっちがシャンプーで、こっちがリンス。どっちも頭洗う石鹸でね、シャンプーのあとにリンスするといいよ!髪がさらさらになるの!」
「なんだか複雑なんだな…」
「慣れればどうってことないと思うよ!脱衣所にタオルと着替え置いておくから使ってね」
「わかった、ありがとう」
與儀に風呂の説明を一通りしてもらった後、斬魄刀を外し、死覇装を脱いだ。
たどたどしくもなんとか髪や体を洗い、湯船に浸かって温まることができた。
気持ち悪かった血の感触も臭いも綺麗になくなり、すっきりとして風呂から出た。
脱衣所に出れば、與儀が用意してくれたタオルが置いてあり、ありがたく使わせてもらう。
タオルの隣には着替えが畳まれており、それをばさっと広げれば、ゆったりとして可愛らしいシルエットのワンピース。
「……乱菊が喜びそうだな」
現世のファッションが大好きな同期からしょっちゅう絡まれていたおかげで、これがワンピースと呼ばれるものだと知っていたし、着方もわかっていた。
まさか、無駄だとしか思わなかったあのくだらない雑談が、こんなところで生きてくるとは思わなかった。
不本意ながら乱菊に心の中で礼を言っておくことにする。
着替えを済ませて脱衣所から出ると、部屋の中には與儀はおらず、代わりに金髪の少女が部屋の中にいた。
彼女は私を見て、座っていたソファから立ち上がった。
「初めまして、私は『輪』第弐号艇闘員のツクモ。平門から話は聞いたわ。しばらくの間、よろしくね」
丁寧に自己紹介をされ、すっと手を差し出された。
私は彼女に近寄ってその手を遠慮なく握り、自分も名乗る。
「ツクモか、私は苗字名前だ、名前と呼んでくれ。よろしく頼む」
「着替え、與儀に言われて私のを持ってきたんだけど…サイズ合ってるみたいで、よかった」
「これはツクモのものだったのか、ありがたく着させてもらってる。大丈夫、大きさはちょうどいいぞ」
「それならよかった」
小さく微笑んだツクモは、ここを自室として使うようにと私に説明をしてくれた。
途中、私が投げかける質問に、ツクモは一つ一つ丁寧に答えてくれてとても助かった。
この艇のありとあらゆる世話をしてくれるという、例の羊についても詳しく教えてくれた。
こんなぬいぐるみのような羊が高性能な機械だったなんて、と驚愕した。
おそるおそる触れた羊毛はふわふわで、とても機械とは思えなかった。
ちなみに私は、ふわふわしたものが大好きだ。
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