「…そういうわけだ、君にはしばらくここにいてもらう。拒否権はないからな」
「ふぅん…」

平門が語る大量の話を脳内で整理し、咀嚼し、時間をかけてやっとのことで理解をした。
とにかく、私はしばらくの間ここで保護されることになるらしい。
しかし、それと同時に1つの疑問が浮かびあがる。
ここは本当に、私の知っている現世なのだろうか。
尸魂界にも、逐一現世についての情報は入ってきている。
しかし、能力者だとか、『輪』だとか、明らかに重要であろうその類の話は、全くといっていいほど入ってきていなかった。
私の知る現世は、時折大小様々な犯罪や事件が起きるが、それでも常に平穏な世界だ。
能力者なんていう危険な存在を確認することなどなかった。
私の中に、1つの仮説が浮かぶ。
もしかしてここは、私のいる世界とは違う世界なのではないか、と。
この仮定が事実だとしたら、残念なことに全ての疑問が解決する。
尤も、異世界なのだから仕方ない、と無理矢理納得せざるをえないということなのだが。
不安になった私は、平門に1つ頼みごとをした。

「黒崎一護?」
「あぁ、オレンジ色の髪で目つきの悪い男だ。空座町というところに住んでいる」
「ちょっと待っていろ」

平門は席を立ち、机においてあるパソコンを開く。
証拠として、一護の存在を確認したかったのだ。
ここは十二番隊のように膨大な情報を持っていると踏んでの頼みごとだった。
パチパチとキーボードを叩く音が何度かされ、案の定すぐに答えを出してくれた。

「黒崎一護で合ってるな?」
「あぁ」
「そうか、残念ながらそんな男はこの世に存在しない」
「っ!…そう、か…ありがとう」

それは、仮説が事実になった瞬間だった。
受け入れたくはないと思うが、それでもこれは現実。
逃げることなど出来はしない。

「…その男が、どうかしたか?」
「いや…いないなら、いい」

もう一度ソファに戻ってきた平門の目を、私は見つめる。
一度與儀に視線を移し、平門に戻した。
話さなくてはならないだろう、きっと、私もこの世のデータに存在しない。
信じてくれるわけないだろうが、それでも嘘をつくよりマシだ。

「…話がある」
「…言ってみろ」





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