「おかえりメェ」
「なっ、喋った…!」
「ただいま〜!名前ちゃんも、羊にただいまって言って?」
「た…ただい、ま…」
「声紋登録」

ぬいぐるみだと思った羊が喋り出し、與儀はそれに「ただいま」と答えている。
私がただいまと答えればキュイィンという機械的な音が聞えてきて、渦巻状の角がぐるぐると回転した。
この羊はぬいぐるみではなく機械なのか?
だがそんな風には一切見えない。
これはどういう状況だろうか…。
抱き上げられていた身体を下ろされ、やっと地に足がついた。

「こっちだよ、ついて来て」

與儀に言われるがまま長い廊下を進む。
しばらくきょろきょろとしながら歩いていると、與儀は1つの扉の前で立ち止まった。
コンコンと控えめに戸を叩く。

「與儀です。言われた通り、連れてきました」
「入れ」

扉の開けられた部屋の中には、眼鏡をかけた黒髪の男がいた。
微笑みを浮かべて、やはりこの男も霊体である私をしっかりと視界に捉えている。
與儀も、この男も、何故私が見えるのだろうか。
男と與儀に促されて、部屋のソファに腰掛ける。
私の目の前には男が座り、與儀は男の座ったソファの後ろに立っていた。

「初めまして。私は国家防衛機関『輪』第弐号艇長、平門だ」
「私は苗字名前だ」
「能力者と交戦し、奴らを倒したと聞いたが…それは本当か?」
「本当だ」

少し話しただけではあるが、この平門という男は中々食えない奴だ。
食えないというより、腹の底が知れないといった方がいい。
微笑を浮かべて私と話しているが、それは貼り付けたものにしか過ぎず、心の中を悟らせない。
まるで京楽隊長のようだ。
真面目に話を進めてくれる辺りは、あの方と大きく違うのだが。

「與儀が詳しく説明してるとは思えないのでな、まず簡単に能力者や『輪』について教えよう」
「それはありがたい」
「なっ、平門さぁん!!」

與儀は不満そうな顔をしたが、平門が話し出してしまったので反論する隙は与えられず、子供のように口を尖らせていた。





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