「君!こんなところで何してるの!?その血…!」
「!、お前…私が見えるのか?」
「え?見えるに決まってるでしょ!」

慌てたように大声をあげながら私の前に降り立つ男。
男は真っ直ぐに私を見る。
死覇装に身を包んだ、霊体の私を。
どういうことか、探ってみた霊圧はお世辞にも大したものとは言えず、この程度ではプラスの魂白すら見ることはできないだろう。
なのに何故、この男は死神である私を見ることができる?
困惑して黙り込んだ私に痺れを切らしたのか、男は私の肩を掴んで大きく揺さぶる。
見えることに驚いていたのに、まさか体を触ることもできるだなんて。
一体どういうことだろう。

「ねぇ君!ここで能力者と会った!?この血は君の血なの!?」
「能力者?…あの化け物と黒い物体のことか?」
「っそ、それ!会ったの!?」
「いきなり襲い掛かってきたから、殺してしまったが…それと、この血は私のものじゃない。その化け物のものだ。どこもケガはしていない」

そう言い切れば、その男の顔からみるみると血の気が引いていった。
私は何か悪いことを言ったか?
もしかして、あの化け物はこの男にとって大切だったとか?
しかし、襲ってきたのは化け物の方で、あれは応戦せざるをえなかった仕方のないことだ。
そんなことを考えてる間に、いつの間にか男は携帯電話を取り出し、誰かと通話しているようだった。
尸魂界に戻れないとなると、しばらく現世で生活しなければならない。
これから、私はどうすればいいだろうか。

「…はい、わかりました」

通話を終えた男がこちらへ振り返る。
困ったように眉を下げながら、あのね、と口を開く。

「俺、国家防衛機関『輪』第弐号艇闘員の與儀です、君は?」
「(サーカス?)…私は苗字名前という」
「名前ちゃん、でいいかな?えっと、君がさっき戦ったっていう化け物は能力者と言ってね、仲間の血の匂いに敏感なんだ。だから、その返り血を浴びた名前ちゃんは、奴らの標的にされる可能性があって…無条件に、『輪』の保護対象になるんだ」
「無条件…強制か」
「うん、ごめんね。だから…『輪』の艇まで来てもらうね」

言うや否や、與儀と名乗った男は私の腰に腕を回して、抱き上げた。
突然のことに驚き、降ろせと叫ぶより前に與儀は地面を蹴っていた。
そのままもの凄いスピードで空を飛んでいく。

「…なんだ、これは」
「これが、『輪』の艇です!」

見たこともないほど大きな機械が空を飛んでいた。
現世においても最先端といえるだろうそれに、私は口をポカンと開けたままだった。
與儀は艇の入り口へと向ったようで、シュンッと言う音ともに視界に広がっていた空が消えた。
代わりに目に映るのは、機械的な室内と、黒い仮面を被った羊のぬいぐるみだった。




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