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結局あの洞窟で嘉禄に辿り着くための手がかりになるものは見つからなかったらしい。
ただ、隠すように洞窟の中の穴におかれていたボロボロのノートを発見し、燭はとても興味深そうにそれを読んでいた。
與儀には全く読めないような内容らしく、苦笑いを漏らしていた。
そして、来たときと同じように无を先頭にして森の出口まで戻ると、調査員たちも先に戻っていて、今は全員揃ってツクモの持ってきてくれた昼食を食べている最中だ。
イヴァとツクモのやりとりを見ながら笑い、穏やかな時間を過ごしていたが燭の言葉によって早々に引き上げとなってしまった。
なんだ、もう少しゆっくりしたっていいだろうに。
調査員たちの片付けを眺めていると、花礫が與儀に近付いていった。

「なぁ、俺寄りたいところあるんだけど」
「え、どこどこ?」
「多分ここからすぐ隣の、カラスナってとこ。俺の住んでた街」
「花礫くんの住んでたところ!?へぇ〜ここから近いんだ!」
「花礫っ、俺も一緒に行く!」
「はぁ?お前が来る意味ねーだろ」

花礫の言葉を聞きつけて行くことが決まったわけでもないのに、无は花礫の腕にしがみついて食い下がっている。
與儀は與儀でイヴァやツクモに相談しているようだった。
最終的な判断は平門に任せることにしたらしく、與儀は平門に電話をかけはじめた。
花礫の住んでいたところか…少し興味があるな。
もしも无も行くことになったら私も同行させてもらえるか交渉してみようか。
電話を終えたらしい與儀がこちらに戻ってきて、无へ笑顔を見せた。

「よかったね〜无ちゃん!平門さんが一緒に行ってもいいって!苗字ちゃんも!」
「え、私もいいのか」
「うん、平門さんが苗字ちゃんも連れて行け〜って」
「邪魔なだけなんだよっ、研案塔のヤツら一緒に戻らせろよ!」
「无ちゃんきっと花礫くんと離れるのが怖いんだよ〜嘉禄サンって人も急にいなくなっちゃったでしょ〜?」
「はぁ!?……ちっ、しょうがねぇな」

自分の腕にしがみついたままの无を見下ろした花礫には、无がニジそのものにでも見えたのだろう、あっさりと陥落した。
花礫の背後で万歳をして喜ぶ无と與儀を見て私は堪えられずに思い切り笑わせてもらった。
どっちもまるで子供じゃないか。
平門の許可も出たということで、グッピーでカラスナまで送り届けてもらい、私達4人はそこで降りた。

「じゃあ、みんな気をつけて」
「ありがと〜ツクモちゃーん!」

燭たちを乗せたグッピーを見送り、私たちは花礫の先導で街へ向った。





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