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「せ、先生!いつも嫌がってごめんなさいっ!会いたかったです〜俺達もう遭難したかと…」
「なるほど、嫌がっていたのか」
「與儀、イヴァ、無事で何よりだ」
「花礫っ、けが!?」

べそをかきながら燭へと飛び込んできた與儀の後ろから、突然現れたイヴァに抱えられた花礫がやってきた。
その抱えられている状況に无は驚き、慌てて花礫に駆け寄った。
私もその後に続いてイヴァへ近寄った。

「だってフラついてるんだもの、そんなのに合わせてチンタラ探してらんないじゃない?暴れたらキスするっておどしちゃったー」

霊圧を感じていたのでイヴァがこの森に来ていたのは知っていたのだが、まさか花礫を抱えて現れるとは思わなかったので、苦笑をもらした。
花礫は耐えられないのだろう、両手で顔を覆ってしまっていてなんともいたたまれない気持ちになる。
イヴァが言うこともわからなくはないが、これでは花礫が可哀そうだと思えてくる。
ひとまず花礫は燭に簡単にではあるが診察をしてもらい、大事をとって森の入り口へ戻ることになった。
イヴァとともに立ち上がった花礫の背中へ、慌てて无が駆け寄った。
「花礫…っ、ごめん、ねっ…」
「ハ?何が?」

无は自分のせいで花礫が傷つけられたと思って謝ったが、一方花礫はさして気にした様子はなく、首だけこちらへ振り向けて返答をした。
私は、未だ少し覚束ないような足取りでイヴァとともに森の中へと消える花礫の背中を、无と見送った。

「无、行くぞ」
「うん…」

花礫を気にしたままの无の背中をやんわりと押し、燭と與儀の待つ洞窟の入り口へと連れて行く。
洞窟の中に入れば、こじんまりとした空間が広がっていて、必要最低限程度の荷物、家具が置かれていた。
燭も言っていたが、とても人の手で作ったとは思えないほど器用にできていた。

「…无?どうかしたか?」

无はこの空間で窓にあたる場所を見つめていた。
何かが見えたのか、目を何度かこすり瞬きを繰り返している。
不思議に思って尋ねてみたが、何でもないでも言うように首を横に振った。
與儀と燭は洞窟内のものを漁りはじめたが、私は何もすることがなかったので、无の傍にいることにした。
そういえば、无は一緒に住んでいた嘉禄という男を探していたんだったな。
嘉禄という男がどういう人間なのかは无にしかわからないが、少なくとも私はあまりいい印象を受けていない。
つい先日无が苦しんでいたのは、その男が原因らしいという話を聞いた。
无は彼を実に慕っているらしいが、あんな風に无を苦しめてほしくはないと思う。
そんなことを思いながら无を見つめていれば、无はきょとんと目を丸めて首をかしげた。



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