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无と燭の方へ駆け寄ると、燭の手に白い塊が見えたので上から覗き込めば、小さなうさぎのような丸々とした動物のようだった。

「燭、无、ケガはないか?」
「あ、俺…」
「大したことはない、ほんのかすり傷程度だ。お前はどうだ」
「あぁ、私はそのかすり傷1つすらついていないからな、問題ない」

シュンと眉尻を下げる无に視線を向ける。
自分が言いつけを守らずに飛び出してしまったことに気を揉んでいるのだろう。
その胸に抱えられているのは燭から手渡されたさっきの白い生き物。
小さく震えてしまっているようだ。

「无、これは…」
「あの、ごめんなさい!俺、この子、助けたくて…」

突然謝ってきた无に驚きつつ、その白い生き物を見る。
よく見るとその小さな足が少々黒ずんでしまっていて、まるで痣のようだった。
…なるほど、さっき无が茂みから飛び出したのはこれか。
おそらくこの痣は先ほどの能力者からの攻撃に巻き込まれてできたものなのだろう。
心優しい无は放っておくことなんてできず、守ろうとして咄嗟に飛び出してしまったのだろう。
无らしいな。
私は无の頭に手をやり、軽くわしゃわしゃと撫でる。
…そういえば、よくこうして浮竹隊長が労ってくださったな。
もう遠い昔のことのように感じてしまう。

「誰も怒ったりしないよ。无が助けてやらなかったら、もっと酷いケガをしていたかもしれない、无はこいつらの命を救ったんだよ」
「命…」
「あぁ、大事なものだ。大丈夫、无のしたことは間違っちゃいない。だけどな、无?お前はお前の命も大事にしなきゃいけないんだぞ、そのことを忘れるな」
「…うん!」

いつもの無邪気な笑顔で頷いた无に、私も笑って頷き返した。
ちょうどその時、茂みからガサガサと葉がこすれる音が聞こえてきて、同時に與儀の声も聞こえてきた。
やっと戻ってきたかと呆れ半分に安堵の息を漏らした。



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