2


與儀に声をかけた瞬間、上空から黒い物体がいくつもこちらへ向って降って来た。
无たちを守るために前へ出た與儀にぶつかり、與儀の頬から血が滴った。
私はその間に无たちを茂みに追いやり、万一のことを考えて縛道をかけた。

「縛道の七十三 倒山晶!」

无たちの隠れている茂み一体を囲えば、能力者から3人は見えなくなる。
茂みから出れば、與儀は既にあの黒い物体と交戦中で、私もすぐに応戦した。
人型ではないが感じる霊圧は同じであり、大して強いわけでもなく、與儀と手分けして倒していく。
やはりこういう戦いの最中になると、口元が緩んでしまうのは自分もあの荒くれ者の一員なのだと改めて実感する。
こうして刀を振るう機会があるというのが、楽しくて仕方ないというのが正直な感想だ。
與儀が大きな技を放ち、あらかたの能力者を倒したと思った。
だが、茂みの中に隠れていたはずの无が、突然そこから飛び出してきた。

「无!?」
「待て…!」
「无っ!だめだ!」

私も與儀も燭もその場にいた全ての人間は、こいつらが无を目的として襲撃してきたと思っていた。
飛び出した无を追って燭や花礫までもが无に駆け寄り、能力者から无を守ろうとした。
だが、无に向っていたはずの能力者が突然方向を変え、木の根に足を取られて座り込んでしまっていた花礫の方へと向ってきた。

「っ、花礫!!」

完全に虚をつかれた行動に與儀も燭も動けず、瞬歩を使った私でさえもあと一歩届かず、花礫はあの黒い物体に飲み込まれ、そのまま森の奥へと連れていかれた。

「花礫くん!」
「與儀、私が…」
「俺、花礫くん追うから名前ちゃんはここにいて!動かないでね!」
「っ、わかった」

與儀は高速で空を飛んで森の中へと姿を消した。
得体の知れない能力者に連れ去られたのだから花礫のことは心配だが、きっと與儀が助けてくれるはずだ。
それに、先ほどから覚えのある霊圧を感じている。
だから、もし万が一何かあったとしても大丈夫だと思う。
私は與儀が消えていった方向を見つめたあと、刀を仕舞いながら无と燭へと振り返った。



戻る

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -