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「ここがニジの森か…」

青く透き通った海に、のびのびと枝を広げる木々の生い茂った森。
グッピーと呼ばれる小さめの航空機に乗り込み、ニジの森のという場所へと降り立った。
昨日の夜、部屋にやってきた療師と與儀からここが无と嘉禄の住んでいた場所らしいという話を聞き、无はここへ行くことを決めた。
花礫と私も同行することとなり、與儀とともに研案塔の調査員複数名、そして燭とともにやってきた。
空気が澄んでいてとても気持ちがよかった。

「ではこれから、目的地である『嘉禄の家』へ向って移動する」

燭から簡単な説明を受けたあとで、无を先頭にして森の中を進んで行く。
私はきっと一番最初に危険に気付くことができるだろうから、と无の隣に並んで歩いた。
无はいつものオドオドとした雰囲気とはまるで違い、何の目印もない草むらを立ち止まることなく進んで行く。
途中見かけた蜃気楼すら、无には見えていないのかと疑うほどあっさりと通り抜け、私たちを驚かせた。
一時間程歩いたあとで、无は向こうに目的地があると言って一人走り出した。
无を追いかければ背の高い木々に囲まれ、ちょっとやそっとでは見つけることができないような場所に出た。
だが。

「これは…」
「自然発火ではない!調べろ!」

辿り着いた場所にあったのは、焼け焦げて黒ずんでしまったしまった家の残骸だった。
燭の指示の元、調査員達が燃え残りを探しにかかる。
无はショックを受けているのだろうかと振り返れば、特に思い入れもなかったのか表情に変化はなかった。

「无ちゃん、元気出して、燃えてなくなっちゃったけど…」
「俺がずっといたところもあるよ」
「どこだ?行くぞ!」

无の言葉を拾った燭が立ち上がり、調査員をこの場に置いて无の言う場所へと行くことになった。
そこから少し森を進んだところにある洞窟、无が指差したのはここだった。
本当にこんなところで暮らしていたのだろうかと疑問に思った瞬間、私は反射的に刀を抜いた。
能力者の霊圧を感じたのだ。

「え、名前ちゃん!?」
「與儀!上だ!」



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